#001 昭和初期の浜大津駅前
写真絵葉書には、撮影された当時の情報がぎっしり詰まっています。
知っている場所の絵葉書は、何時撮られたんだろう?とか、○○が写ってる!とか、様々なことを考えながら鑑賞しています。、
普段はひと通り見終わると、スッと忘れてしまうのですが、備忘録がわりに絵葉書の情報を整理しておこうというのがこの文の趣旨です。
写真絵葉書には、どの場所で撮ったかがわかるように、たいていタイトルがついています。「京都へのスタートライン浜大津」というのが、この絵葉書のタイトルで、( )にくくられた「大津市名勝」はシリーズ名。手に入れた絵葉書は11枚だったんですが、奇数は不自然な気がするので、元々は他の風景がセットに含まれていたかもしれません。
江若鉄道ができた戦前の浜大津駅あたり
さて、中身の話。まず撮影年代は、昭和初期。昭和3年から遅くても昭和10年前後の間に撮影されたのだと思います。
昭和3年の根拠は、交差点の奥に見える2階建ての建物(白いやつ)。これは江若鉄道浜大津駅舎で、昭和3年に浜大津に線路が延伸したときに建設されました。また、江若駅舎の手前に見えている、京阪電鉄石坂線の浜大津駅に停車する電車(側面が見えているほう)の向こうに、乗降客用のひさしがチラッと見えるのですが、これは昭和12年に撤去されたという記録があるので、その間に絞りました。建物が多く映っているので、ほかにもよく調べると幅が狭まりそうですが、とりあえず…
江若駅舎の2階の小窓、京阪京津線の乗降場
次に細部の鑑賞。個人的に面白かったのは、江若鉄道の浜大津駅舎の屋根に小屋根(ドーマー)が付いていること。廃線時には取り払われているのですが、当初はあったんだということがわかります。
また、昭和戦前の京阪電車の様子がわかるのもポイントです。京津線は京都から来て線路は(写真手前)、交差点手前で終点になっていて、今のように石山坂本線とはつながっていません。路上で乗り降りしていたということ。ものの本によれば、昭和14年に石山坂本線と線路が繋がるので、それ以前の様子イメージできます。
路上を走る自転車・2つの降車ホーム
また、京津線の線路沿いの様子に目を向けると、両側にある建物は業種まではわかりませんが、活気にあふれた様子が見て取れます。ちなみに右下の洋館(「ビール」の看板がある建物)はトモエ食堂で、浜通りの角(今は京都信用金庫の仮店舗がある場所=令和3年現在)。
ほかにも道路上の乗り物が面白いなとか、京津線の降車用のホームが2か所ある(電車あるホーム以外に、手前にも道路上ホームが見える)とか、いろいろな発見がありました。
謎の洋館
ほかにも気になったのは、画面左端に見える2階建の洋館(ちなみに琵琶湖の向こうに見える建物は旧琵琶湖ホテル)。大津にはこうした建物が結構ありますが、用途や素性がわからないものが多いです。写真の洋館は、この写真で初めて気が付いたので、折を見て調べてみたいと思います。