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豊かな生活、豊かな暮らし ~豊かに暮らす秘訣とは?~

ならまち格子の家の企画で、私が所属する『なら・町家研究会』は9月に『町家の再生と活用とその実際 ~豊かに暮らす秘訣~』と題してパネル展を開催し、期間中に講演会を行った。
開催趣旨などについては、下記の投稿を一読いただきたい。

この年末、私は事務所にて、時間を見つけては仕事机のまわりを片付けているのだが、山と積み上げられた資料の一番下から、この講演会に関する事前打合せを行った際の走り書きメモを見つけた。

それはそれはひどい走り書きなのだが、読めないことはない。

講演会の当日には時間の都合上、触れる事が出来なかった内容だったので、ここに書き残しておくことにする。


この打ち合わせの席上、「町家の再生・活用で大切にしていることは何か?」と尋ねられ、私は「町家の伝統的な間取りの柔軟性」と答えた。
その他、「改修する時点での施主による目先の希望だけではなく、将来を見通した町家暮らしについて考えることを大切にしている」ことを話し、「例えば階段や段差は日常生活におけるバリアとなることもあるが、暮らしながら建物がもつこれらの個性と付き合っていけるように、あるいは個性を活かせるように設計時には留意している」ことを付け加えた。

また、「町家暮らしにおける豊かさとは?」と問われて、「私がまず最初に頭に思い浮かべたのは『暮らす人がご機嫌でいられるか?』ということだ」と発言している。

ここでいうところの『ご機嫌』とは、『体調の良・不良に関わらず、愉快である(不愉快ではない)』ということである。

走り書きメモには、『(筆者注釈:町家の再生と活用において実現できる)豊かな生活、豊かな暮らし』が四角く囲まれており、続けて『豊かさとは?』と書かれていた。

その下に書かれていたのは次の3つ。

  • いつまでも無理なく暮らせる(過ごせる)

  • 飽きない生活

  • 「特別」ではなく、「当たり前」が幸せ

皆で話をしているときに出し合った言葉である。

ここで話している『豊かさ』とは、単に『金持ちか否か』という話ではない。
『丁寧な暮らし』とも異なるような気がしている。

一見するとさほど変わり映えがしない毎日かもしれないけれども、その日々の暮らしがご機嫌であれば、そこには豊かさがあるように思うのだ。

この世に生を受けて、天寿を全うするまでの間、出来る限り長くご機嫌に過ごすことが出来るのであれば、それほど幸せなことはないのではなかろうか。

これはなにも町家の再生と活用に限った話ではない。
新築について考える際も同様で、『豊かな暮らし』を実現できるように取り組みたいと思っている。


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