見出し画像

地下室/Bob Dylan(1975)


Basement tapesのイラスト

昨年の4月に、ディランをフェスティバルホール(大阪)に観に行きました。恥ずかしながら人生初の生ディランでした。僕は14歳で初めてビートルズを通して洋楽に夢中になって、色々なアーチストを聞いてきましたが、ディランはあまりにこわそうなおじさんに見えてどっぷりと漬かることはなかったし、あのでかい顔写真に、どうもジャケ買いする意欲が沸かず、どこかに意識しながら遠い存在となってしまっていました。18歳の時、1978年武道館ライブで有名な日本公演は、大阪では松下電器体育館(大阪府枚方市)でありました。ほんと近くに住んでいたのにその時は全く興味がありませんでした。東京にいるときも結構来日してて何度もライブに行こうかどうしようかと迷っていましたが、かたくなに過去のヒット曲は歌わないことは知っていましたからどうも遠ざけてしまいました。そんなわけで初めて観たとき彼はすでに82歳になってしまっていました。でもこころに残る素晴らしいライブでした。最後のあいさつで仁王立ちしてこちらをにらみつけるような神のようなディランの存在に背筋が伸びるような気分でした。その佇まいを一生忘れることはないと思います。

ところでこの「地下室」というアルバムのジャケットは、ぼくの一番好きなディランのレコードジャケットです。なんか楽しそうでしょ?多くのダサいディランのアルバムデザインの中で異彩を放っています。このアルバムは1975年発売ですが、1967年にザ・バンドのメンバー(ロビーロバートソン以外)が暮らしていた通称「ビッグ・ピンク」の地下室で録音されたものでほとんどが構成されています。1966年までの多忙な活動と、直前に起こしたバイクの大事故もあり、彼にとっては療養とリフレッシュ期間でのデモレコーディングでした。「レコーディングはああじゃなきゃ。穏やかでリラックスできる環境でね。つまり誰かの地下室とか。窓は開けて犬が寝っ転がってさ」と言っていたみたいです。即興による粗削りな歌い方、あまり調和的でないハーモニー、十分でない機材による歪みなど、ちょっと悪ふざけした雰囲気が音だけでなく、このアルバムジャケットからも漂ってきます。だって、ディランが、横を向いて「マンドリン」をバイオリンのように弾いているのですから。何かと賛否両論のアルバムですが、バンドとやる楽しさが音だけで十分伝わってきます。

ちょっとびっくりでしたが、この投稿をしようと思っていた矢先に、昨夜突然のザ・バンドのガース・ハドソンの訃報を聴きました。今このアルバムを改めて手にしました。ジャケットのディランの上でフリューゲルホーン?を担いでいるりっぱな髭のおじさんがガースです。このアルバムジャケットの顔が1975年であったなら、彼は37歳のとき、1967年であれば29歳?でしょうか?この時からメンバーの誰よりも優しい眼差しのように感じます。ご冥福をお祈りします。

当時の地下室をガース自身が振り返っている映像があります。僕には何て言ってるのかさっぱりわかりませんが、ビッグピンクと地下室の雰囲気は感じることができます。どなたか彼が何言ってるのか教えてくれませんか?

追記
ガースが何を言ってるのか、Lonesom Cowboyさんがご丁寧に教えてくださいました。下記のコメントに掲載いただきました。ご興味ある方は覗いてみてください。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集