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アンチアルゴス・アンダーグラウンド
先遣隊として地下施設に乗り込んだオレは窮地に立たされていた。
敵は四人、全員サブマシンガンを構えている。
一方、物陰に隠れているオレと森野の武器は拳銃だ。
「おい、お前ら!少しは手伝え!」
別の物陰に隠れているデカいコーカソイド男を睨む。
「殺していいなら頭を打ち抜くが?」
男はそう言って、真顔でアンチアルゴス社の社給ジャケットから拳銃を取り出した。
「いいワケないだろ!」
「なら人間はお前らの管
変革の解 三部 おまけ
カウマン通りのマキ'sバーは、いつものように客で賑わっていた。男女の楽しげな声に満たされた店のドアが開いて、黒い制服姿の青年が入ってきた。異常事態対策部隊特殊派遣員の制服だ。茶色がかった黒髪にダークブラウンの瞳、物々しい制服とは対照的に、その顔には幼さが残る。同年代平均値より低いと認めざるを得ない身長と童顔は本人も気にしているところではあった。
青年に気づくと、店長と店の看板娘であるマキがカウンタ
変革の解 過去設定とあとがき的な何か
変革の解に登場するエフォラとウィルルについては、私の人生においてかなり付き合いの長いキャラクターです。
中学生の頃にファンタジー小説を書き始めたその時に生まれたのがエフォラとその旅の連れでした。
当時書いていたのは、所謂「剣と魔法」のファンタジーで、エフォラは旅の魔導士でした。
細かい設定は忘れましたが、森の中で繭のような物を見つけ、そこから出てきたのが銀髪スカイブルーの瞳の少年ウィードでした。こ
53 最近は落ち着いた?
夕立が上がり、日が傾き始めるとあちこちでネオン看板が点灯し始めた。ケバケバしい光は濡れた道路に滲んで溶けていく。窓から上を見上げても、建ち並ぶビルで空は僅かしか見えない。
ここは、アンチアルゴスD地区サテライトオフィス。
「報告書できましたー」
間延びした声でトミタロウがフォルクハルトに伝えると、彼は落ち着いた様子で「ありがとう。確認しておく」と応えた。
「なんか、落ち着きましたね」
トミタロウは
52 スポーツジムで会う男
いつものスポーツジムで、ロッカーに荷物を放り込んだあと、最近見なくなった常連が受付に来ているのが見えた。体格のいいコーカソイドなので目立つ男だ。右眉の辺りに古い傷があり、訳ありだろうかとも思っていたが、特に問題を起こすような事もなく、いつも一人で黙々とトレーニングをしていた。それが、ある時からパタリと来なくなっていたのだ。特に話した事があるわけではなかったが、同じ時間帯にいる事が多く、ストイックに
もっとみる大石笹身 Oishi Sasami
主にファンタジーやSF小説を書いている。
真面目なSF→「不気味の谷」
完結済み
不気味の谷
SFラブコメ→アンチアルゴス・サテライトオフィス
短編を気分が向いた時に更新中
マガジンになっています。
癖を詰め込んで、自分が楽しむ用に書いている物。
R18は「R18アンチアルゴス・サテライトオフィス」マガジンに分けています。
ファンタジー→変革の解
所謂ライトノベル的なファンタジー長編
51 甘い甘えは甘くない
ほのかに照らされた店内で、いくつもの静かに談笑する声がふわりと浮かんでは消えていく。カウンター席でマスターと話す常連客、仕事の疲れを癒しに同僚と飲み交わす人、そして噂のスイーツとカクテルに引き寄せられて初めて訪れた浮かれた新規客。皆それぞれの時間を楽しんでいる。
ハルキとフォルクハルトは4人掛けのテーブル席で向かい合って黙々とスイーツを食べていた。ハルキがこのバーの噂を聞きつけて、仕事終わり夕食を
50 かわいいのは誰?
フォルクハルトがシャワーを済ませてリビングに戻ると、ハルキがソファに座って料理番組を見ていた。
「珍しいな。食い物に興味のないお前が料理番組なんて」
「まあ、多少は覚えようと思ってな」
ハルキは少しだけフォルクハルトに顔を向けたあと、画面に目を戻す。フォルクハルトは隣に座って一緒に画面を見た。画面には男が二人おり、片方は私服にエプロン、もう片方はシェフらしい格好でコック帽も被っている。エプロン姿の
48 思い出すあの頃
ハルキはいつも突然何かに誘ってくる。
「パンケーキを食べに行こう。男一人じゃ入りにくいだろう」
どこか得意げに言ったハルキだったが、フォルクハルトには、何故得意げなのか皆目見当がつかなかった。
「いや別に。食べたかったら一人でも入るが」
フォルクハルトが当たり前のように言うと、ハルキは恐ろしいものを見る顔になる。
「店員がビビるから、やめてあげろ」
「なぜ…?そういえば、あの手の店は一人で入るとた
46 クリスマスどうする?
風呂が沸くのを待っている間、ハルキは予約が始まったクリスマスケーキの広告を眺めていた。
「今年のクリスマスはどうする?」
「どうするって何がだ?」
キョトンとしているフォルクハルトに、ハルキは呆れた顔をした。
「去年は家で過ごしたが、一昨年はちょっといいレストランでご飯食べただろ?」
「ん?ああ、そういば、あれはクリスマス・イブだったか」
フォルクハルトのさして興味もなさそうな様子に、ハルキは嘆息
44 河戸くんと田中さん
研究の中間発表会が無事終わり、研究室の面々との打ち上げもお開きとなり、僕と田中さんは自宅へ帰り着いた。学部の四年の頃にルームシェアを始めたので同居生活もそろそろ一年になる。家賃を減らすために始めたルームシェアだが、案外お互い居心地が良く、大学院に入ってからもその状況は続いていた。
順番に軽くシャワーを済ませると、冷蔵庫から缶ビールを二本出して、改めて乾杯する。
「まずは無事に終わって良かったー」