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ゴジラ2回目&『君たちはどう生きるか』へ行ってきた

(*ネタバレを含みますのでご注意ください)
 どれだけ好きなんだという感じですけれども、『ゴジラ−1』2回目を鑑賞しました。だってもうアメリカでは上映終了なんですよ…。

 今回は別の映画館。小ぢんまりしております。

 2回目もですね、控え目に言って最高でした。
 夫は「映像も音楽もシナリオも非の打ち所がない!」と帰り道もゴジラ愛がダダ漏れ状態。DVDはもちろんだけど、サウンドトラックも買わないと、ということで意見が一致しました…(笑)。 
 息子も一緒に鑑賞しましたが、楽しんだ模様(夫のSF英才教育により、ゴジラも初期ウルトラマンもスタートレック(カーク船長時代の)等々も学習済み…)。一番好きなキャラクターは水島(山田裕貴)、次席が敷島(神木隆之介)だそうです。意外にも、助っ人に現れる水島がかっこいいんだとか。子供にはそう見えるんだなぁと面白い。
 2回目はディテールに目を配る余裕ができるので、色々細かい部分まで楽しめました。敷島の苦悩に涙し、明子(永谷咲笑)の可愛いさにハートを射抜かれ、アクションに燃え、ゴジラのテーマに盛り上がり…。満足です。 
 聞いた所によると、日本では『ゴジラ−1』の白黒バージョンが公開されるそうですね…何ですかその面白そうな試み!う、羨ましい(涙)。米国には来てくれません。いいなぁいいなぁ。

 そして、『ゴジラ−1』をおかわりする数日前に、念願の『君たちはどう生きるか』を家族で鑑賞。
 英語タイトルは『The Boy and the Heron』。原題とは似ても似つかぬタイトルです。宣伝用にサムネイルのカットが使われているのも腑に落ちない。もっと魅力的な絵がなかったのかしら。これじゃあ子供にはあんまり受けない気がする…などなどなど、配給会社の広告戦略にそこはかとない不満を抱きつつも、宮崎駿監督最新作!!とワクワクが止まりません(←次回作もあるかもという願望を込めて、最後の作品とは言わない…)。

うーん、間違ってはいないんだろうけど…もうちょっとこう…

 非常に難解であるという前評判は耳にしていたので、入り込めるかなぁという不安を密かに抱いて行きました。結果どうだったかというと…
 色々メタファーやメッセージがあるのだろうなと随所で思いつつも、ストーリーが難しいということはなく楽しめました!
 というのが全体の感想。
 私としては、似た印象の作品『千と千尋の神隠し』の方が難解でした。プラス、『千と千尋〜』の方はキャラクターの感情曲線が常に自分のものとずれていて感情移入し辛かったのですが、『君たちは〜』の方は入り込み易かった。
 暗い&歪んでいるという評判の眞人ですが、あまり違和感がなかった…というか、素直な少年だなぁと感じた私はひねくれているのだろうか…
 執念深く青サギを殺そうと試みたり、自傷行為に走るのは衝撃的ですが、母を失ってすぐに継母(しかも母の実妹。しかもすでに妊娠中。そして美女)ができ、父親は金にものを言わせる、子供っぽく無神経な人物(お陰で転校先でいじめられる)等々、鬱屈が蓄積するのはよく分かる。そして眞人、過剰なほどに感情を殺し、己を抑圧している少年。加えて、知恵がある(あり合わせのもので武器を作ってみたり、下男のおじいさんをタバコで買収してみたり)。人一倍賢さや繊細さがありながら、大人のようにふるまう姿が辛い。そりゃあ爆発もするでしょう…
 あの青サギを殺そうとしたのも、「怪しいから殺す!」というよりも、「自分の心の声を殺す」という衝動に見えました。「おかあさーん!」と叫ぶ青サギは、眞人自身だなと。それが映画が進むにつれて感情を豊かに表現するようになり、サギ男とぶつかり、助け合い、何だかんだいいコンビになり、最後に「友達」と言わせる過程がすごくよかった。
 そういう意味では『The Boy and the Heron 』は的を射たタイトルなのかも。

 青サギ(サギ男)と凶悪インコ、良かったですねぇ。
 お世辞にも魅力的とは言えない造形…と思っていたサギ男、いいです。ぜんぜん可愛くないのに、最後の方はキュートに思えてしまう不思議。これは眞人が変化したからサギ男も変化したということなのか。
 それと、インコたち。いやー悪いインコです。凶悪です。イノセントな顔して斧と包丁を隠し持って迫ってくる肉食インコなんですよ…どんなホラーですか。宮崎駿監督らしからぬ凶悪なキャラ。サギ男とインコたち、人間キャラよりもインパクトがありました。
 全編に渡って「悪意」に焦点をあてている物語でもあったので、インコのくだりも、どんな生き物にも悪意がある、というメッセージなのかなと思いました。が、正直「悪」というほどのものかというと…どうだろうか。凶悪犯罪に潜む悪意というものとは別種に思える。もっと本能的な「欲求」とか「衝動」に近いような。そういうものに嘘をついて抑え込むと心は歪むんだよ、という風に受け取りました。悲しいとか、恋しいとか、苦しいという根源的な情動を歪めると、眞人のように自分を傷つけてしまうんだよ、というような。

 他の部分については、あの鏑矢の意味はとか、ペリカンが押し入ってきた墓は何だったのかとか、産屋とは、空に浮かんでいた巨大な石とは、積み木の意味とは、等々謎は尽きないわけですが。私には考察しきれないので他の方の思索にお任せするとして…(←放棄)
 不満だった点を上げると、ラストのカタルシスが薄いこと(あっさり終わってしまってもったいなかった)、それと声ですね…。サギ男役の菅田将暉さんはすごくはまっていて良かった。けれど他は…ノーコメントで…。
 美術は美しかったですが、『千と千尋〜』の方がイマジネーション豊かだった印象(ストーリーには入り込めなかったけれど、映像は素晴らしかった)。こちらは迫力があるというよりも、夢のようなふわっとした雰囲気だったなと。そのわりに凶悪インコがいたりするわけですが。音楽も控えめでしたね(米津さんの『地球儀』は本当に素晴らしいです)。
 
 夫はゴジラに続いてこちらも非常に楽しんだようで、「あの大叔父さんは宮崎駿自身だよね、きっと。自分の後を託せる人を探しているというメッセージかな」などと申しておりました。
…さては中身は日本人ですね夫よ。
 息子の感想は、「ヒミが可愛い!」でした。…息子よ…。うん、可愛かったよ確かに…でももっと他にこう…。まぁいいです…。
 周囲の席は結構埋まっていまして、隣に座っていた家族などは、色んなシーンでクスクス笑っていました。冒頭、おばあさんたちが登場したシーンで笑っていたのにはびっくりした。そこ、面白いんだ…!?という(笑)。
 サギ男、凶悪インコのシーンでも笑いが止まらず。若いきり子が釣り上げた巨大魚を解体するシーンでも、なぜか笑いが上がっていましたね。米国人の笑いのツボがミステリアスでした。
 
 まとめとしては、置いてきぼりにされるほど突飛なストーリーではなく、幅広い世代がそれぞれ楽しめる要素が詰まっている映画だと思いました。泣くほど心揺さぶられるかというと、人によるかなぁと。眞人に感情移入できれば胸打たれる場面が多々あると思います。苦手な方にはちょっと辛いかも。
 君たちはどう生きるか、という大きなメッセージをどう解釈したらいいのか、よくわからないというのが正直な印象でした。でも、繰り返し見たくなる映画です。考える種が随所に蒔かれている、それを探しに出かけたくなるような物語でした。
 宮崎駿監督の作品と言えば、『未来少年コナン』や『風の谷のナウシカ』が真っ先に頭に浮かぶ年代です(厳密にはリアルタイムではなく、数年遅れて見ていますが)。宮崎作品に物語というものの面白さを教わったな、とつくづく思います。感性の柔らかい時代にあれらの作品に没入できたのは、ほんとうに幸運なことでした。
 ありがとうございました。できたらまだまだ作品を作ってください。…と思いながらエンドロールを眺めた日でした。
  

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