夢酔藤山先生の新聞デビュー作が刊行されます!
前記事でご紹介した夢酔藤山先生の新聞連載デビュー作『梅の花の咲く処』が、西多摩新聞社より3月に刊行されます。素晴らしい作品なので、微力ながら力いっぱい応援させていただきたく…!
試し読みはこちらからどうぞ。
大変恐縮なことに、なぜか私があとがきを寄稿いたしております。
どこの誰…?と読者の方がほぼ100パーセント思われるであろう人間のあとがき…ご著書の汚点になりはしないかと戦々恐々としております…(震え)。
しかし、このような記念すべき機会にご指名いただいたからには、ご著書の魅力をぜひ読者の皆様にお伝えしたいと思い、力を尽くして文章を綴りました。少しでもお役に立てたならば、これほど嬉しいことはありません。
あとがきの作成に当たっては、事前に原稿を拝読する役得にあずかりました。そこで、物語について興を削がない程度にご紹介をさせていただこうと思います。
本書の中心となる人物は、戦国時代に武蔵国杣保一帯(現在の青梅周辺)を治めた三田氏最後の当主、三田綱秀(弾正)。綱秀は旧主関東管領上杉氏への忠義のため、勢力を拡大する北条氏照との熾烈な戦いに挑みます。
物語の最大の魅力となっているのは、容赦のない戦国の無情と鮮やかに対比される、三田氏という家族の丁寧な描写ではないかと思います。
強い信頼と愛情で結ばれ、鉄壁の結束を誇った三田一族。けれども、大きな歴史のうねりに翻弄され、絆は揺らぎ、あるいはすれ違い、戦火の中悲劇へ向かって押し流されていく。家族のそれぞれに向けられた視線に込められた共感と敬意には、心を揺さぶられずにはいられません。歴史の大局から人間性の普遍性を抉り出そうとする視座は、先生の作品の底流に常に感じられるものですが、本書ではそれがとりわけ前面に押し出されているように思いました。
歴史に勝者も敗者もいない。すべては無に帰していく。透徹した筆致は残酷な真実を描き出します。それにもかかわらず、物語の最後の光景に辿り着いた時、感じるのはささやかでありながら力強い希望と祈りなのです。
人間の短い生には、時を経てもなお失せることのない輝きが宿る。刹那の儚い光だけれども、それは混沌とした世を迷いながら生きる人間の道標となる。現代の困難な世界を生きる我々にとっても。物語は静かに、揺るぎなくそう語りかけてきます。
梅の香りは物語を象徴する見事なモチーフとなっています。そこに込められた祈りと希望がいつまでも胸に響く、そんな物語でした。
…読了後、しばらく身動きできないほど心を揺さぶられました(心で号泣でしたもう)。胸に深く突き刺さる、壮絶にして美しい物語、ぜひ手に取っていただきたいと思います。
本書は、先生の三田氏に関する講演にちなんだ受注限定発売企画とのこと。予約申し込みは下記西多摩新聞社HPよりどうぞ。強くお勧めです。
三田氏の歴史と本書の紹介はこちらの記事でも↓
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