詩|春休みの自由研究


図鑑はまだ気づいていない。
その木にはたしかに心臓があった。
ゆっくりとした鼓動に、二つの時が混ざり合っていく。


朝、露を落とした葉は
昼、薄い緑に活気づき
夜、子守歌に囲まれる

風の鼓動に微かに揺られ
虫と暗黙の了解で頷き合っている
止まっては去るヤマゲラはまるで子どものよう

やさしい命のやり取りに森は融け合っている


その太っとい幹に全てを委ねて
両の腕で抱きしめてごらんよ
樹皮のかさついた手触りの奥にしっとりと命を感じるよ



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