詩|街灯と雪でできた街


1

街灯を前に
その犬はただ
首筋を見せるように
項垂れて
あのように
雪を被っていた

冷たい街で
冷たい街で

それは石像のように
表情も変わることなく
暗く
沈み
己を侵害してきた者に
吠えることもなく
苦しそうに
噛みついた

中には
肉を差し出す者
屈んで笑いかける者
電気屋は
傍らに備品を置き去った
彼の目に
雪道の喧嘩は
無邪気なじゃれ合いに
映ったのであろうか

飼い主の面影もなく
冷たく荒んだ顔と
対照的に
僅かに揺れ動く
力の籠ったその瞳は
何かを待っているように
私には思われた


2

街灯を前に
項垂れていた犬は
周りにあった雪を
ほんの少しだけ溶かした末
気づけば
姿を消していた

彼の抜け殻を
覆うように降りしきる雪に
私は少しだけ
寂しさを感じながら
彼の幸せを願う


街灯は
何ひとつ融かすことなく
降る雪を照らし続ける
冷たい街で
冷たい街で
私は
彼の幸せを願う



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