詩|飢えた手のひら
秋の虫は
姿を見せることなく
音だけを残し
気づけば
消えている
私の心臓は
何のために
鳴いているのだろう
独りの部屋に
響く胸の虫は
番いでも探しているのか
握りこぶしで生まれ
今や野晒しになった手のひら
あの人とを繋ぐための痛みなら
もう要らないのではないか
秋の虫は
何のために
鳴いていたのだろう
河原に一匹
響いた秋の虫は
番いを見つけられたろうか
あいた手のひらが
唇のように鋭く冴え
何より今救われたくて
握れる相手を捜している
私の心臓は
何のために
鳴いているのだろう
骨で分厚く覆い
魔の手から逃れまでして