詩|銀の一匙
紅葉に囲まれし
ほとりの泉に
焦げ茶の泥だまり
含まれる砂鉄は
純銀となり
光を照り返し
錆びれた売り子
笑みを浮かべる
覗く者はあらず
微かな波紋を
眺めていたら
今日も今日とて
陽は傾いている
それでも
泉の外では
生きられませんもの
砂鉄で作った
銀のスプーンで
ひとくち
口に運んだ時の
艶やかさ
縁から
零れ落ちゆく
一滴の雫
上質な心持ち
それだけのこと
笑って生きる
銀に変えて生きる
[ひとくちメモ]
『歳を重ね何が変わったか。内なるスプーンが鉄から銀になっただけのこと』という着想から書き上げました。
実際には、そんな立派な人間ではありません。
いわば決意の詩です。