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書評 EUの緒問題

今回はエマニュエル・トッドさんの『問題は英国ではない、EUなのだ』より抜粋してお届けいたします。彼は今回のブレグジットを予測、さらにそれは「歴史の必然だ」と肯定的に捉え、「いずれEUは解体する」としております。

イギリスの変遷

1688年 名誉革命 「議会制君主政体」の確立
(そのおよそ100年後)1789年 フランス革命
当時最先端の「イギリスに追いつけ!」

グローバリゼーションの始まりと、終わりの始まり

グローバル化を牽引した二つの国
サッチャリズム :市場原理主義 「社会なんて存在しない」
レーガン    :新自由主義

ブレグジット、トランプはそんな「global fatigue」の象徴といえる。
出口調査もそれを証明します。ブレグジットの最大動機は「イギリス議会の主権回復」でした。

「移民のコントロール」と「排外主義」はイコールでない。
「領土的安全の権利」「移民現象をコントロールする権利」は、民主主義の基盤の中に含まれます。

ドイツ一強への不安

人口バランスの悪いドイツは、移民政策でその穴を埋めようとしている。
ドイツの主導する緊縮経済政策で、EU各国の失業率・景気は大きく後退している。
EU設立の背景にある、ドイツへの警戒は、ブレグジットで大きく難しくなった。いまや、フランスもイタリヤもドイツの指示に従うまでです。

歴史の主役としての中産階級

中産階級こそ歴史を動かす。アリストテレスから言われている。
社会に基盤をもたらし、外敵の排除ができると。

そう、閉塞感にあるのに、「なぜ中産階級は、1%の富の独占を許し、貧しい人を貧ままに放置できるのか」というというこそ重要です。

今のフランスで言えば、
オランドさんを象徴に、「MAZ集合体=Moyennes+Ages+catholiques Zombies」が、中産階級の中心と言えるでしょう。

数字による帰納:経験主義的に導く理論

進学率・識字率・出生率・乳児死亡率・内婚率・家族体系など・・
その数値と政治形態・経済的豊かさの因果を見ていく

ネオリベラズムの矛盾

「個人」の自立には、「国家」が不可欠。
※1935年 アメリカ 社会保障制度をたてる アメリカの黄金期へ
ネオリベラルによって、個人が家族に頼らざるを得ず、「個人の自立」が妨たげられる。

また家族の重視が、家族を殺すのも事実。
全て負わせることで、晩婚化・少子化が進みます。

必要なのは、国家の解体でなく、国家の再評価ではないでしょうか?

※筆者注:国家の運営は空中線になりコントロール不能であれば、地域への介入・監視・熟議が、今後有効な手立てと言えるかもしれません。

中の世界・外の世界

今高等教育を受けた層は一定層へ。
そんな中、彼らは自分の仲間のうちに閉じこもり、自分の階層の関心を追う映画を作り、見ます。
「エリートのプチ・ブル化、ナルシスト化」です。

彼らの関心は、自分自身。
必ず死がある・老いるという有限性、所属する社会国家があるという有限性を否定し、肉体・性・審美・経済的自己実現に勤しみ、ジョギング・ダイエット・美術館巡り・蓄財に励みます。

※筆者注:耳の痛い議論です。外の世界への関心、介入なくして、本当の意味での自己実現も、社会貢献もないと思うのは私だけでしょうか?

取り急ぎまとめとなります。
その他の箇所も語り口調で読みやすい一冊なので(amazonで安いです)、是非ご覧ください。
今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
佐々木真吾

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