臼蓋形成不全による殿部痛
他院受診後、佐々木整形外科に受診した患者さんについて紹介します。
臀部痛・膝痛を訴える50代女性です。
他院で4ヶ月治療したものの上記症状は変化なく、知人の紹介で来院された方です。前医で股関節の臼蓋形成不全を指摘され(上記のXP参)、投薬と筋トレを中心としたリハビリを受けましたが、破行も出てきました。理学療法士は適切に中殿筋を含めた治療指導をされていました。内服薬も無効で筋肉トレーニングやストレッチでも良くならず、整形外科治療の限界なのかも知れません。
このような症状の方に当院では、腰部・殿部に深部灸頭鍼を行っています。深部灸頭鍼法とは9cmの長い鍼を用い、鍼頭に艾をのせ燃焼させる治療法です。今回の主たるターゲットは梨状筋・小殿筋・中臀筋などの臀部の深部にある筋です。マッサージでは浅い筋肉への刺激が強く、その刺激はなかなか深いところにある筋肉には達しません。ストレッチも深部の筋肉を選択的に伸ばすことは困難です。
深部灸頭鍼は臀部の奥にある筋肉を直接刺激し、お灸の熱を伝えることができます。熱を加えることで鍼の効果は短時間で倍増します。案の定、治療直後症状は半減し、ここ4ヶ月変わらなかった症状が急に良くなり患者さんは驚いていました。
灸頭鍼法の正確な作用機序は不明ですが、筋の強張り過緊張などを軽減させる効果があるようです。治療効果は素早く優れています。患者さんは、治療直後に靴下を履くことが楽になって喜んでいました。
この治療は臼蓋形成不全からくる筋の強張りなどを一時的にとっただけです。日常生活は楽になりますが、臼蓋形成不全や変形性股関節症の根本的な治療ではありません。時間の経過や過負荷で軟骨の摩耗は進み将来的には手術が必要になることが多いのです。しかし、病気の進行の過程で一時的にせよ症状が軽くなることは患者さんにとって大きな喜びです。患者さんは『数日であれ、少しでも痛みが軽くなるんだ。』と感じます。特に臼蓋形成不全は女性が多く、洗濯炊事・買い物の際の痛みが軽くなることは大きなQOLの違いなのです。その安息と希望が今後必要となる治療の心の支えとなるのです。
長い整形外科医としての経験から通常の整形外科治療にプラスアルファを求め深部灸頭鍼を行い10年。個人的定義ですが筋肉の機能障害はその症状はやや軽く、異常があっても何とか生活できことが多い事がわかってきました。それ故に見逃されていることが残念です。これら症例を提示するとともに、その原因について記事を書こうと考えています。