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モバイルWi-FiとMeraki Goを用いたプログラミングキャンプ用ネットワーク構築
夏休みもそろそろ終わりですね。
ライフイズテックでは夏休み期間中に、中学生・高校生のためのIT・プログラミングキャンプを開催しました。
キャンプでの成果物を見ると、今時の子供達は本当にすごいなあ、と思いますよ。
そしてやりたいことがすぐできる環境に恵まれていて、本当に良い時代になったものだなあと。
ちょっと早いのですが冬シーズンのクリスマスキャンプのプレエントリー募集も始まりました。
中学生、高校生のお子さんがいらっしゃる方は是非参加をご検討くださいませ。楽しいですよ。
さて、プログラミングキャンプを開催するためには、裏側ではいろいろな準備が必要なのですが、今回はインターネット接続をキャンプ会場で提供する話を書いてみます。
プログラミングキャンプはどんな会場でやるのか?
会場一覧のウェブページを見てもらうとわかるのですが、大学で開催されることが多いです。
中学生・高校生にとっては、大学に訪問することで近い将来のイメージが具体的になって、勉強に身が入るような効果があるのかもしれませんね。
大きめの部屋をプログラミング会場として利用し、6人ぐらいで1つの机にまとまって開発を行ないます。
会場の広さにもよりますが、8〜16グループぐらいに分かれて各コース別に開発を進めていきます。
どうやってインターネット接続するか
会場の既設Wi-Fiが使えれば一番楽なのですが、残念ながらゲスト用には提供されていない会場も多いです。
また臨時回線を引ければ良いのですが、会場側から許可が出ない場合がほとんどです。
そういう場合にはモバイルWi-Fiを複数台レンタルして、それをみんなで共有しながら使うことになります。
モバイルWi-Fiだけを使った構成例
モバイルWi-Fiは、携帯キャリアに接続して、Wi-Fiで各端末にインターネット接続を提供する片手サイズの機器です。
ポケット型Wi-Fiとも言われています。
上流の接続先は、ドコモ、au、ソフトバンク等、機種とSIMによって様々なキャリアを利用可能です。
旅行者向けにトラベルWi-FiとしてSIM込みでレンタルされてもいます。
キャリアの電波が届くところであればWi-Fi経由でインターネット接続ができるようになる
レンタルサービスを利用することで短期間限定の利用が可能
小さいので邪魔にならない
となかなか便利です。
モバイルWi-Fiには接続台数の制限があるため、実際に会場で使う際には、
各テーブル毎に1つずつモバイルWi-Fiを配ってそれを使ってもらう
ポケットWi-Fi毎にSSIDは変える
使用チャンネルを適切に選択する
というように設定する必要があります。
近くのテーブルと同じチャンネルにならないように具体的には以下のように配置します。
A、B、C、D、はそれぞれ別のチャンネルを設定しています。
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これで最低限のインターネット接続環境は提供できます。
モバイルWi-Fiだけを使った構成の問題点
ただしモバイルWi-Fiだけを使った構成にはいろいろ問題もあります。
設定が面倒
キャンプ向けには、以下の設定をしなければいけないのですが、
SSIDとパスフレーズ
使用チャンネル
液晶画面からは細かい設定ができないので、
PCをモバイルWi-Fiに接続
ウェブ管理画面で設定
ということを1台1台やる必要があります。
台数が増えると意外と時間がかかります。
どこのテーブルにどのチャンネルを割りあてるか、というのも事前に考える必要があります。
設定できることが少ない
Wi-Fiアクセスポイントに、速度が遅い機器が接続されていると、その通信速度に引っ張られて、他の機器の通信速度も遅くなってしまいます。
イベントWi-Fiに適したアクセスポイントであれば、遅い機器は接続を切る、というような設定をすることができるのですが、ポケットWi-Fiではそのような設定項目は残念ながらありません。
また5GHz帯のチャンネルは選択できず、1つに固定されていまう、というような機器もあります。
その場合は5GHz帯を使おうとすると、全部のモバイルWi-Fiが同じチャンネルになってしまうため、2.4GHz帯のチャンネルをメインに利用せざる得ません。
通信量が多くなると制限がかかる
モバイルWi-Fiは、通信料が多くなりすぎると、通信キャリア側から制限をかけられてしまいます。
そうするとその回線は使えなくなってしまうので
予備機を用意しておき
定期的に通信量をモニタリングして
制限がかけられたら交換する
という現場でのオペレーションが必要になりますが、わりと面倒です。
トラブル発生時の対応が困難
この構成で、インターネットに繋らなくなった、遅くなった、というときの原因は、
接続台数が制限を超えた
キャリアから通信量制限がかかった
繋がっている端末が物理的に遠くに移動して速度が遅くなり全体が引きずられて遅くなった
ということが考えられるのでが、現場でそれを適切に判断して対応を行なうのはなかなか難しいです。
まとめ
問題点を1枚の絵にまとめてみました。
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モバイルWi-Fi + クレードル + Meraki Go を使った回線提供
モバイルWi-Fiだけを使った構成はお手軽な反面、上記のような問題がありました。
モバイルWi-FiのWi-Fiの仕様がイマイチなのであれば、有線LANでネットワークを出して、そこに別のWi-Fiアクセスポイントを接続して使えば良さそうです。
この夏は、クレードルとMeraki Goを使った構成を試してみました。
クレードルとはどういうものか
モバイルWi-Fiルータのオプション機器で、有線LANでネットワーク接続を提供できる機材です。
専用の充電器のような形状をしています。
モバイルWi-Fiルータ毎に製品が出ているので、それに合った製品を買う必要があります。
5,000円ぐらいで買えます。
Meraki Go とはどういうものか
Meraki Go は Cisco のエントリ向けのWi-Fiアクセスポイントで、大規模に使うための最低限の機能が揃っている製品です。
"Go"が付いてないMerakiブランドに比べると、機能は弱い
ただその分お値段は安い
設定はクラウド上の管理画面から行なう
各機器はクラウド上から設定をダウンロードして自動設定される
接続ステータス等がクラウド上の管理画面から確認できる
正常に動作しているか
接続している端末一覧
トラフィック等も確認可能
複数台の統合管理ができる
複数台をまとめて設定可能
複数のSSIDのネットワークを提供可能
複数人で管理ができる
複数の管理者アカウントを作成可能
閲覧専用アカウントも作成可能
NATルータ機能あり
接続先が変わってもIPアドレスを維持するハンドオーバー機能あり
モバイルWi-Fiと違って
遅い端末の切断(Rate Limit制限)
チャンネルの自動選択
等のイベント向けWi-Fiに必要な機能もちゃんと入っています。
Meraki Goの事前設定
会場で使う前に、Meraki Goは事前に以下の設定をしておきます。
どこかのインターネットに接続できる環境にMeraki Goを接続
管理画面から機器登録
機器に適切な名前を付ける
管理画面上から、SSID等を設定
Meraki Goが設定をアップデートするのを待つ
設定後は、Meraki Goはインターネットに通信できる環境に接続しさえすれば、すぐに事前に設定した通りに動いて、ステータスもクラウドから見えるようになります。
会場設営
モバイルWi-Fi,クレードル、Meraki Go,を接続したものを1セットとして、会場に適切に配置していきます。
モバイルWi-Fiだけを使ったときに比べると、物理的に配置する機材は多くなるのですが、チャンネル設定、SSID設定等の作業は不要になります。
イメージとしては以下のように雑に置いておくイメージです。
01〜08のように機器に適当に名前を付けています。
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会場でのチャンネル調整
Meraki Goでは起動時に利用チャンネルを自動で選択してくれますが、他のWi-Fi機器の電波状況により、うまくチャンネルが分散しない場合もあります。
その場合はクラウド上からチャンネルを適切に設定をする必要があります。
利用期間中のステータス把握
利用中は管理画面を見ることで
トラフィック量
全体
アクセスポイント毎
端末毎
接続されている端末一覧
利用しているアプリケーション
問題が起きていないか
等が把握できます。
これにより、何かあったときも対応がスムーズにできますし、トラブルになる前に問題に気付くこともできるようになります。
クラウド管理画面は現場以外の場所からも見ることができるのも便利です。
モバイルWi-Fi + クレードル + Meraki Go を使った構成の評価
良かったこと、悪かったこと、残っている課題、について書き出してみます
良かったこと
Rate Limit制限等、接続を安定させるための設定ができるようになった
設営時のWi-Fiの細かい設定が不要になった
接続数制限がなくなった
管理画面からステータスが把握できるようになった
トラブルシューティングが容易になった
リモートからもステータス把握ができるようになった
悪かったこと
機材コストが増えた
Meraki Go の費用は増える
クレードル費用も増える
残っている課題
上流がモバイルWi-Fiということに起因する問題は残る
上流が遅い
使用量が多いと通信キャリアにより制限をかけられてしまう
まとめ
クレードルとMeraki Goを使うことで改善されたこと、残っている課題についても図にまとめてみました。
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今後トライしてみたいこと
いろいろやってみたいこともあるので、なんとなく書いておきます。
ひょっとすると誰かに相談に行くかもしれませんが、そのときにはどうぞよろしくお願いします。
クレードルの代替品探し
クレードルはモバイルWi-Fiの機種毎に違います。
モバイルWi-Fiとクレードルは、USB-Cで接続しているだけなので、
給電
ネットワーク接続
をUSB-Cで行なう機器を自前で作ればクレードルの代替品にはなりそうです。
おそらくRaspberry Piあたりを使えば簡単に作れる気がします。
ただ、クレードルは5000円以下で買えるけど、Raspberry Piはまだまだ高いんですよねえ。
Raspberry Pi Zero は安いのですが、有線LANは外付けになってしまって取り回しが微妙です。
また、Raspberry PiにLTEモジュールを載せれば、モバイルルータの代わりもできそうなのですが、LTEモジュールのお値段はわりと高いんですよね。
なにか良い機材等を知っている人がいたら教えてください。
モバイルWi-Fiの代替品探し、通信量制限がないSIM探し
今はスポットでレンタルできるモバイルWi-Fiを使っているのですが、もう少し機能が充実したSIMが刺さるルータを用意して、SIMだけ契約したほうが良いのかも、とも思っています。
ただ、SIMが刺さるちゃんとしたルータはお値段がまだ高いんですよねえ。
そしてキャンプ用に適したSIMもまだ見付けられていません。
良い機材を知っている人がいたら教えてください。
また、通信量制限がないSIMが出せるよ、という方がいたらいいなと思っているので、そういう人がもしいたら教えてください。会いに行きます。
OpenRoaming の調査
大学では相互利用が可能なWi-Fiローミングサービスの eduroam が使えるところも多く、そういうところでは、eduroamのアカウントがあればゲストでもWi-Fiが使えるんですよね。
ライフイズテックがeduraomに参加できれば良いのですが、調べた限りでは残念ながら参加条件を満たすのは厳しそうです。
ただ eduroam が使えるところでは OpenRoaming が使えるところも多いんですよね。
OpenRoamingのアカウントを発行できれば、大学の既設のネットワークを利用できるかもしれないと思っています。
ひょっとすると誰かに相談に行くかもしれないのですが、その時はどうぞよろしくお願いします。
Meraki Go より高機能なアクセスポイントの導入
Meraki Goは
必要充分な機能を持ち
費用もそこそこ安く
調達も容易
で、とても良い機材なのですが、上位機種のMerakiや他の同レベルの製品を使うと、もっと高機能でいろいろなことができます。
ネットワークのステータスを見せるようなAPI等が標準で提供されているので、そのAPIをキャンプの参加者に提供して自由にいじってもらう、みたいなことをすると面白いんじゃないかなあ、と思っています。
Starlink の活用
Starlink を使えば衛星経由で快適なインターネット接続が提供できます。
プログラミングキャンプで利用できないか評価をしたことがあるのですが、本当に快適なインターネット接続ができてびっくりしました。
ただアンテナを空が見える広い場所に設置する必要があり、そういう設置場所を確保するのはなかなか難しいのが現状です。
もし設置場所が確保できる会場があれば使ってみたい、とは思っています。
まとめ
将来的には、どこに行っても誰でもPCからフリーWi-Fiに簡単に繋げられる、という世界になると良いなあ、と思っています。
どこでも当たり前にインターネットが使える社会の実現のために、まだまだみんなで頑張りましょうね!
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