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佐々木 明
2016年8月3日 23:50
「あたしの絵を描いて」 ――彼女がそう言った時、僕は、まるで星の王子さまみたいだな、と思った。 机の上に広げていた、数学のノートを閉じる。「……悪いけど、そこまでうまくないんだよ。」 少しだけ間を置いてから、僕は彼女にそう言い聞かせた。 星の王子様に、絵心がないんだといった、飛行機乗りみたいに。「でも、いつも一杯描いてるじゃない。いいでしょ。一枚ぐらい。」 傲慢に笑う彼