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2016年8月の記事一覧

棘ある薔薇と、絵を描かない画家の話

「あたしの絵を描いて」

 ――彼女がそう言った時、僕は、まるで星の王子さまみたいだな、と思った。

 机の上に広げていた、数学のノートを閉じる。

「……悪いけど、そこまでうまくないんだよ。」

 少しだけ間を置いてから、僕は彼女にそう言い聞かせた。

 星の王子様に、絵心がないんだといった、飛行機乗りみたいに。

「でも、いつも一杯描いてるじゃない。いいでしょ。一枚ぐらい。」

 傲慢に笑う彼

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