理念浸透を捉える枠組み『経営理念の浸透』- ②
この本では経営理念の浸透を以下の3つの視点から捉えています。(なかなか本論が始まりません…w)
1. 理念的カテゴリーの中心化プロセスとしての理念浸透(マクロな視点)
組織のアイデンティティは無数の要素から成り立つ複雑なものです。「Apple」という企業名を聞いただけでも「デザインのすごい会社」「スマホの会社」「年収が高い会社」など無数のアイデンティティが考えられます。
その無数のアイデンティティの中から「我々はこうあるべき」という規範的なものを「理念的カテゴリー」と呼びます。
ややこしいですが、これは経営理念そのものではありません。
理念的カテゴリーは必ずしも明文化されたものではなく、自然と形成される可能性もあります。
それを明文化し、意図的に整理したものが経営理念です。
多くの企業が掲げる理念やMVVはこの「経営理念」にあたり、その会社の「理念的カテゴリー」を制御します。
「組織理念の浸透」とは「こうあるべき」という理念的カテゴリーが組織アイデンティティの中心的な位置を占めるようになることを指します。
2.組織アイデンティティへの体現プロセスとしての理念浸透(マクロ⇔ミクロ)
1では理念的カテゴリーが組織全体で組織アイデンティティの中心となっているかという視点で理念を捉えています。
それに対し、組織のメンバー個人が「組織アイデンティティ」の中で「経営理念」が中心的な立場となっていると捉えているか、というよりミクロにも寄った視点で理念浸透を分析する観点です。
3. 組織成員の自己カテゴリー化プロセスとしての理念浸透(ミクロ)
仮に個人がいくら経営理念が組織の中で浸透していると捉えていたとしても、それが自分自身の社会的アイデンティティと紐づかなければそれはどこか他人事のような関わり方となります。
例えば、あなたの会社が「幸福な人を増やす」というミッションを体現できている、とあなたが考えていてもあなたは「お金がたくさん貰えるから」という理由で在籍しているだけかもしれません。これでは個人のアイデンティティと組織の中心にある理念というアイデンティティに大きな乖離があり、とても理念が浸透しているとは言えません。
この観点で「理念が浸透している」状態とは、個人が会社の理念的なカテゴリーの中に自身も属していると考えられているケースです。上記で言えば「幸福な人を増やす会社である」というミッションの元で、自分も「幸福な人を増やす一員である」と考えている状態です。
アイデンティティは組織の数、チームの数だけ存在する
3つ目の観点の中で面白い研究があります。
Foreman and Whetten(2002)は、協同組合に所属している個人が組合全体と自身が所属する支店のそれぞれに異なる組織アイデンティティがあると捉えていることを指摘しました。
組織というものの多重性を考える面白い事例です。
実践への含蓄
組織をマクロとミクロに捉える具体的な観点として以上の3つが登場しました。
なんとなく、組織文化というものを考える際は1のマクロな考え方を取りがちだったり、個人が「組織っぽい」振る舞いをしているかに注目していますが、それを体系的に整理する手法として極めて網羅的なフレームワークのように思います。
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