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逆噴射小説大賞2024応募作品

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逆噴射小説大賞2024応募作品です。
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記事一覧

デッドマンスイッチ・ラブ・シャンプー

 綿100%の下着しかつけない。俺は肌が弱いから。  そんな俺のこだわりがつまったボクサーパンツは吸水限界をむかえ、尻とパイプ椅子の座面との間は大量の汗によりビチャビチャだった。  真っ暗ながら足裏からむき出しのコンクリートを感じる。それに生乾きのまま何年もタンスにしまった服みたいなカビ臭さ。時折カサコソと背後で音がする。椅子にガムテープでぐるぐる巻きにされている俺は振り返ることもできない。  パンツ一丁で監禁され、どれだけ時間が経ったのか。  なんで、こんなことに? 

禁忌地方・凶都

 べべん! べんべ、べん!  琵琶の弦がしなる。しなる。盲いた奏者のガムシャラなること。  ここは、狂の都が兵暗凶。今日もまた二人、どちらか死ぬまで戦うという。  都の道道では護摩が焚かれ、ばちり、ばちり。木が爆ぜる。 「無銘なれど、我が手中なれば髭切よ。酒呑童子も切り捨ててしんぜよう」  そう言いたるは、大太刀を振り回しスサノオの顕現が如き筋骨隆々、蓬髪無精髭の山男・猛刃丸。 「カッカッカ。お前のような山猿が振り回したところで、髭を切るどころか、避けられ地面に刺