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感想文:映画『YOLO 百元の恋』 リメイクってこうだよね!!!

少し前に観た中国映画『YOLO 百元の恋』がかなり面白かったので、ネタバレ満載の感想文です。

タイトルを見てピンと来る方も多いと思いますが、こちらは安藤サクラ主演『百円の恋』(2014)のリメイク。学生時代に観た覚えがありますが、もう10年も前の作品なんですね……

元々の『百円の恋』が大好きなのでリメイク作品を受け入れられるか不安でしたが、原作通りの部分と変更した部分のバランスが絶妙で最高でした。

大きな変更点は、

・めちゃくちゃコメディ演出になった
・性暴力のシーンが変更になった
・結末の主人公の行動が変わった

という部分だと思います。その他の見所はきっと他の方が語り尽くしていると思うので、私はこの部分を中心に感想を書いていきます。

・めちゃくちゃコメディ演出になった
原作も笑えるシーンは沢山あるのですが、どちらかと言えば静かでシュールな笑いという印象。対して『百元の恋』はコッテコテの王道コメディという感じです。
主人公のローインとボクサーのハオが初めて言葉を交わす、立ちションを車のライトで照らすシーンは最早コントの域。私の観に行った回では、映画館の客席のあちこちから笑い声が聞こえてきました。
監督&主演のジャー・リンは中国屈指のコメディ女優だそうで、このような作風になったのかも知れません。

・性暴力のシーンが変更になった
原作の主人公である一子は、バイト先の先輩から性暴力に遭います。とても痛ましいシーンですが、前半で挫折を描くことで後半のボクシングを始めて変わっていく展開が活きてくるので、あくまでも作劇上では重要な役割があるのだと思います。
対して『百元の恋』では、同じくバイト先の店長から迫られるシーンはあるものの、既にボクシングを習い始めた後なの一撃でKO。ローイン強すぎる。

個人的に、2024年にこの作品をリメイクするにあたり性暴力の描写を無くしたのは英断だと思います。エンタメ作品としての見やすさはもちろん、原作が持つ女性をエンパワメントする要素がより一層強調されたのではないでしょうか。

その分(?)主人公の味わう挫折についてはかなり追加要素が入っています。親友、恋人、従姉などの身近な人間達から裏切られ傷付く様子が存分に描かれ、最後のカタルシスへと繋がっていきます。


・結末の主人公の行動が変わった
ボクシングのプロライセンスを取得した主人公は、物語の最後に初試合を迎えます。補欠出場で格上の相手と対戦した主人公は、試合に負けるのですが、その後の行動が原作とリメイク版で正反対になっています。

原作は「勝ちたかったよ」と泣きながら元恋人のボクサーと手を繋いで家路を行くのに対して、リメイク版では、手を差し伸べる元恋人の誘いを断り「私、勝ったよ」と笑顔で走り去る終わり方になっています。

原作の自堕落で無気力だった一子が「(試合に)勝ちたかったと」悔しさを滲ませるラスト。リメイク版の「(以前までの自分に)勝ったよ」と晴れやかな笑みを浮かべるラスト。
対照的ながら主人公の成長を感じられる素晴らしい締めくくりに、リメイク版ではこうきたか! と大興奮でした。


最後に、リメイクというのは原作の何を残して何を変えるかを楽しむものだと私は思っています。だって、元の作品をなぞるだけならそちらを観れば済む話ですから。
その点、この『YOLO 百元の恋』は物語の骨組みや感情の流れ、キャラクターの本質などの根幹は変えることなく、原作とは全く違った魅力を引き出す取捨選択が見事でした。

もう劇場での公開は終わっているのですが、もう一度観たいのでどこかで配信されると良いなあ。

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