あの頃の未来なんて、今は覚えていないけど。
あの頃の未来って、どんなだったんだろう。
若干二十歳の私の考える未来なんて、今の私からしたら、理想の塊だったと思う。あんまりよく覚えてないけど。きっとさ、不器用で、でも自信だけはやたらとあって。夢もプライドも、スカイツリーの上に光ってる星みたいに、高い場所でキラキラ光ってた。手の届かない場所で。青っぽい星。スピカだっけ? 一等星。
なんだろうね。
戻りたいような、絶対に戻りたくないみたいな、そんな時期だったかも。
でもさ、どんな私になりたかったのかな。毎日毎日、生きるのに必死で、本当によく覚えていない。毎日ご飯作って、洗濯して、必死に自転車漕いでる未来を思い描いてたわけじゃないってことはわかるけど。憧れの夢物語は、いつまでもいつまでも、心の中に燻ってて、どんなタイミングだよって言いたくなる時に、ふと煙を焚いたりするから、いつまでたっても忘れられないでいる。
ごめんね。
今わかった。燻ってるんだった。君の描いたあの頃の未来には、今の私は立ってないってことだよね。口に出すと悲しくなるけど、多分、そう、だと思う。
じゃあ、幸せじゃないかって聞かれたら、そうでもないから。
安心してほしい。
まさか、こんな大人になるなんて、想像はしてなかったけど。