「喉鼓」(のどつづみ)食欲が盛んに起こること。喉が鳴ること。
秋田の夏にだけ味わえる、とびっきりの海の幸。岩ガキ。
秋田県男鹿市。なまはげで全国的に知られる、日本海に突き出した半島だ。
ここの食堂で地物の岩ガキを食べられると聞いてやって来た。
注文をすると、それはすぐに運ばれてきた。
「大きい!」
「ええ、大きいでしょう。今だけですからねぇ」
食堂のおばちゃんの笑みに自信が溢れていた。
本当に大きい。カキの身の部分だけで長さが10センチを超えている。
こんなに凄いものを食べてもいいのだろうかという畏れさえ感じた。
添えられたレモンを絞り、岩ガキを殻ごとを持ち上げると、ふるふると大きな身が震えた。
あまりの大きさに一口では無理かと一瞬ためらったが、思い切って身を口中へ滑り込ませた。
瑞々しい磯の香り、極上の滑らかさ。
濃密な旨みの海に漂い、しばし忘我する。
ああ至福。
岩ガキ、ひとつ500円。
ためらわずに追加を注文した。
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