実話に基づく衝撃の物語『グッド・ナース』スタッフブログ
『グッド・ナース』スタッフブログ
看護師が絡む連続殺人事件は横浜の大口病院の例など、比較的よく耳にする話ですが、このチャールズ・カレンの事件は映画を観てから調べると、その期間の長さと人数の多さに驚愕します。
おそらく単独の犯人の殺人事件として史上最多の部類であることは間違いありません。
映画を観る前に事実を知るのは犯行の手口や経緯を知ることがやはりネタバレに相当するのでお勧めしませんが、事実を知っているかどうかに関わらず、この映画の緊張感と密度の濃さは、第一級のサスペンスとして大変見応えがあり、Netflixが劇場公開作に本作を選ぶのも納得といえます。
物語はまずエイミーのバックグラウンドを描き、次にチャーリーの登場と患者の不審死という経緯を描く、着実で、ある意味でシンプルな展開はオーソドックスで特に目新しいものではありませんが、画面のトーンを抑え、起きていることを淡々と描く物語運びが、却って不穏な空気と尋常でないことが起きているという緊張感が積み重なって、スクリーンに釘付けとなってしまうのです。
チャーリーの犯行が明白となってからも、チャーリーをマークする二人の刑事がなかなか決定的な証拠を押さえることが出来ず、果たしてその後どのように事件を収めることができるのか?といった先の読めなさが、更に観る者を引き付ける牽引力となっていきます。
この一直線な物語運びでこれほど物語に引き込まれる作品はなかなかないと思います。
物語の中でチャーリーの犯行の恐ろしさと同等か、それ以上に恐ろしいのは病院の対応。
犯行に薄々気が付きながら事実が公になるのを恐れ、隠蔽してしまおうとする組織防衛の怖さ、個人情報の保護という名目で過去の勤務歴や不審点が参照されないまま犯行が繰り返されてしまう恐ろしさは、性犯罪の教師が再び教職に就いてしまう事例などと同様の、社会システムの不備を大いに感じさせる問題だと思います。
そもそもの問題として、このようなシリアルキラーが世の中に紛れ込んでいてもなかなか発覚しないことの恐ろしさ。
言い古されてきた問題ですが、人の繋がりが希薄な現代社会において、人格破綻者ともいうべき人物が社会に認知されずに野放しとなっている状態は、きっとこの先も解消されずに繰り返されていくのであろうことを考えると、単なる怖い映画を観た、という体験以上に身近なリスクとして改めて背筋が凍る思いがするのでした。
エンディングでクレジットされるチャーリー犯行の顛末を見ると、人の心の闇を覗き見た思いがして、スクリーンを離れた後もずっと尾を引くのでした。
『グッド・ナース』静岡シネ・ギャラリー上映時間
2022/10/28(金)~11/10(木)まで上映
10/28(金)~11/3(木)まで
①15:30~17:40
11/4(金)~11/10(木)まで
①11:45~13:55