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ずっと走っていたかったのに精神障害になって外に出れなくなった

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2023年2月の記事一覧

精神疾患は心の病気ではなく脳のエラー

医師と話をすれば、強迫性障害などの不安障害を含む精神疾患は、心の問題ではなく脳の問題なのだということが分かってくる。 自分が精神疾患を抱えて初めて、私は今までそんなことも知らなかったのだと思い知った。 私の場合は、”心”に不具合があると言われるより、"脳”に不具合があると言われるほうがよっぽど気が楽だ。「心が疲れる」より「脳が疲れる」がしっくりくる。私の脳は疲れちゃったんだな。 それに、”心”という実態のない存在よりも、”脳”という、物理的に存在する身体の器官に原因があ

目の前のアート作品を眺めている間、私は不安を感じない

走るのが好きで(走っている自分が好きで)続けてきたマラソンはできなくなったけれど、全く外に出ないでじっとしてることも、私にはやっぱりできなかった。そんな自分は結構好きだ。 家の外に出ることは、常に汚染恐怖にさらされている私にとっては危険がいっぱいで、今は外出の回数をできるだけ減らして生活している。そんな私が、危険を冒してでも出掛けたいと思える目的がある。 アート鑑賞だ。 通院を始めてから1年半くらいが経ち、東京での生活にも慣れてきた頃。前から好きだったイラストレーターの

ロバート・コルカー『統合失調症の一族 遺伝か、環境か』は私に一つの答えをくれた

Xで少し話題になっていて、Amazonの評価も高いこの本は、精神疾患に関する私の疑問に、1つの答えをくれた。値段は結構するけれど、読む価値があった。 戦後、アメリカのある一家の10人(!)兄弟のうち、6人が統合失調症と診断され(!!)、その一家が精神疾患の研究にどのように貢献したかが記されたドキュメンタリー。邦題は統合失調症を強調しているが、書かれていることは他の精神疾患にも当てはまる。そもそも精神疾患の診断名の境界線は、とても曖昧だ。 ”遺伝か、環境か”というサブタイト

メンタルクリニックに行ってみるべきかもしれないと自分一人で判断し、調べ、予約し、出掛けていくことはすごく難しい

強迫性障害になるまでは、自分が精神科に通う事になるなんて思ってもみなかった。 最初に自分の状況を相談したのは、会社の産業医。ある日、朝の通勤途中に自分が汚れたという感覚が拭えなくなってしまい、会社に着いた後も涙を止めることができなくなった。仕事にならないので、産業医と繋げてもらうなら今しかないと思った。 汚れてしまってどうしたらいいか分からないと涙を流し続ける部下を前にして、課長もどうしたらいいか分からなかっただろうから、産業医と面談したい、と私が課長に伝えた時、課長自身

悪くなる時は坂道を転げ落ちるみたいに勝手にどんどん悪くなっていくけど良くなる時は坂道をすいすい上っていくみたいに勝手にどんどん良くなっていく

労働基準監督署からの聞き取り調査を受けた。 労災保険給付請求書の提出と申立書の提出を経て、”貴殿の申し立て内容は審査中のため、結果が出るまでしばらくお待ちください”みたいな内容の紙を一枚受け取ってから、1ヶ月以上が過ぎていた。(その通知の封筒はどこから差し出されたものか一切分からない、まっさらな茶封筒で、受け取った時はなかなか怖くて開封するのを躊躇した。) 聞き取り調査は本来は対面で行うとのことだが、今は発症のきっかけとなる出来事が起こった当時の職場から転勤となり、管轄の

思い出すと苦痛ってこんな感じなんだと初めてわかった

私の生活は汚染されるという強迫観念に囚われている。簡単に言えば、精神科に通院するレベルの潔癖症。 汚れたと感じた所を何度も何度も洗ったり、鍵をかけ忘れた気がして何度も何度も確認するなどの強迫行為が、強迫性障害の症状としてよく知られている。 私の場合は洗浄行為の回数が多いことも当てはまるが、汚染を避けるために目的地までの道を遠回りしたり、汚染をなかったことにするために、物を捨てて新しく買ったりたりしなければいけないことが、肉体的にも精神的にも、そして金銭的にも大きな負担にな

ずっと走っていたかったのに強迫性障害になって外に出られなくなった

ランの記録用に勢い勇んでnoteを始めたのが2020年2月の終わり。 今は2023年2月も下旬に入ろうとしている。 強迫性障害と診断されたのが2020年9月。 ちょうど1本目のnote記事を書き終えたあたりから、20数年かけて作り上げた私の世界は、壊れていった。浜辺に作った砂の山が波にさらわれて徐々に崩れていくように、強迫性障害の症状は、私が人生で築いたものを削り取っていった。私の大事なものを奪っていく波に、抵抗する術はなかった。 走ることが趣味の私にとって、外に出られ