オランダちいさい町めぐり エダム・フォーレンダム
小さい町に行くのが好きだ。もちろん観光地のたくさんある大きい都市も楽しいけれど、小さい町をただ歩くようなのが一番好きだ。
いまどき、旅に行くとなったらネット上にたくさん事前情報があふれていて、行っても写真で見たなと思うことすらある。
行こうと思い立つくらいには情報があって、でも写真があんまりないところ。秘境に行くのは怖いけど、適度に知らない新鮮さがほしい。小さい町には、そういう気楽な新鮮さがたくさん隠れている。
公共交通機関で行けるところで、女が一人で歩いても危なくなさそうなところを選んで行く。観光ガイドをぺりぺりめくって、ページの少ないところがちょうどいい。
これといった観光をするでもなく、レストランに入るでもなく、ただその場所の空気を吸って、歩いて、来る前に見た地図が自分の中で立体的になっていくのを楽しむ。そうして自分の中の土地の記憶を増やして帰るのが、なんやかんやで一番好きかもしれなかった。
それは海外の町歩きでも同じで、だからたいてい大都市とセットで、まわりの小さい都市に日帰りで行く。日帰りスタイルにするのは、気楽で、どこにいくかその日の朝に天気を見て決められるからだ。
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アムステルダムに行った時にも、ついでに思い立って近くの小さい町に行った。時間も決めずに、帰りのバスだけなんとなくみておく。これを見なければという目標もないので、焦りもない。気の向くままに散歩して、疲れたらカフェに入る。
アムステルダムの北東にある、エダム・フォーレンダムは、バスでたったの30分で行ける、小旅行にうってつけのところだった。
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エダムはエダムチーズで有名なところ、くらいのイメージで行ったのだけれど、想像以上によかった。アムステルダムと同じく運河が流れているけれど、アムステルダムの近代的な感じとは全然違う。村はどこまでも平らな、靴一足分しか海抜がないような低地にあるので、運河の水面も足元すれすれのところにある。Netherlandsの名の通り、まさに低地に村がある感じだ。
どこまでも続く若草の緑の中に、石造りの建物がこぢんまりとかわいく並んでいる。村の中を通る運河は、とても静かで平和な感じがした。自分が幼少期をここで過ごせるなら、絶対にこの木の下とかで釣りをしたいし、ちいさなボートを川に浮かべたりもしたい。
運河沿いを歩いて大きな教会に向かう道は、なんだかとても風情があった。運河に沿うように建てられている家々はおおきくて、豊かさを感じる。家の前には、ときどきとても綺麗な木の船が浮かんでいる。船が通れるように作られた跳ね橋も、白くてかわいかった。
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フォーレンダムは、エダムからたった10分だけれど、雰囲気は大きく変わる。エダムが昔ながらののどかな緑の村なら、フォーレンダムは活気ある漁師町だ。
バスを降りた瞬間から潮の香りがする。正確には海ではなく淡水の湖なので、潮の香りとは違うのかもしれないけれど。
フォーレンダムが面するマルケル湖は、昔海だったらしい。波の浸食で土地が削られたり、洪水になったりするのを防ぐために、外海との間に堤防をつくることで湖になったそうだが、歩いていて感じる雰囲気的には、いまも完全に海だと思った。
瀬戸内海になじんでいても日本海を見るとテンションが上がるみたいに、海はどの海もちょっとずつ違ってよい。色や波の形が違うのを見て喜びながら、イカリングを買ってベンチで食べる。
オランダはワッフルで有名だけど、フォーレンダムにも一つストロープワッフルの名店がある。Woltje's Backerij。店頭で焼き立てストロープワッフルを買えるほか、2階にちょっとした昔の生活等を再現した展示もある。味は四種類あって(プレーン、チョコ、スペキュラスクッキー、はちみつ)、プレーンの焼き立てを買って、海を見ながら食べた。美味しかったので、結局全部の味を買って帰ることにした(どれも美味しかった)。
遊歩道のお土産屋を眺めていると、かわいいデルフト焼き風の水生生物がたくさんいたので、一個買うことにする。アムステルダムではおなじみの家デザインのやつしかみつからなかったので、好みのを発掘出来てちょっと嬉しい。
アムステルダムの街中は自転車がびゅんびゅん行き交って、観光客もたくさんいたので、綺麗だけれど慌ただしかった。バスでたったの30分で、昔ながらののどかなオランダのような風情を楽しめるのだから、ちいさい町に立ちよるのはやっぱりいい。
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アムステルダムの旅行記はこちら
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