人性
汚い、汚すぎる、今の人の心は。
誰もが自分が1番不幸だと思い込んでる。自分のことしか思いやれなくなっている。人の幸はずるい、不幸は自業自得、なんて言う自分勝手な考え方。汚れている。
ビルの23階から見わたる景色は言うまでもなく美しかった。自分が住んでいるところの大半が目にうつり、たくさんの記憶が蘇った。この明かりのない世界だけど、こう見てみると案外眩しい。
寂しくなるな。
「なんか屋上に人立ってない…?!」
…
「飛び降りるのかな」
…
「早く撮らないと」
…
「もう2時間も経ってるけどまだとばないの?」
…
「俺今日モバイルバッテリー持ってないからさっさと飛び降りろうよ」
…あーあ、やっぱり醜い。みえるのは育ってくれたこの場所だけじゃなかったな。無数の悪魔とその手にある無数のスマホもしっかりとあった。
最後に見るこの世界、それは相変わらず汚くて、泥まみれなものだった。
あれ…手捕まえられてる…助けてくれてるんだ。
「彼女を捕まえたよ!捕まえた!!!」
でもごめん、もういいや。
「…ありがとう」
笑顔見せた。
死ぬのは怖い。だから目を閉じていた。どういう状況になったのかはわからなかった。でも男の悲鳴が聞こえた。
あの人は私の事を救いたかったんだ、こんな思いさせてごめんね。
…ごめんね。
救って欲しかった。
‐パシャッ
“あーあ、またひとつの尊い命が絶ってしまった、俺もちょっと悲しくなった。”‐
うそつけ。