建築物を見て歩くⅪ兵庫県立美術館
美術館巡りは、心が動かされる趣味の一つです。
本を読むことも同様ですが、
大人になった今、小説の類に向き合うことは少なくなったように感じます。
唯一、言葉の紡ぎ方に憧れ続ける宮本輝の小説『錦繍(きんしゅう)』は私のバイブル的存在。時折、手に取り日本語の美しさを再確認します。
美術館に行くのは、日々の忙しさに紛れ、見失いがちな心の場所、在り方を確認したいからかもしれません。
兵庫県立美術館
今回ご紹介する建物は、兵庫県立美術館です。
香川県直島にある地中美術館に次いで好きな美術館です。
駅から歩く途中、目に留まる外観の佇まいが高揚感を呼び覚ましてくれます。
この建物も地中美術館と同じ建築家安藤忠雄の設計です。
建物に入る前の段階で、記憶と記録に留めたい景色が、目に飛びこんできます。
中でもコンクリートに切り取られた空がゆっくりと表情を変えていく様は、見飽きることはありません。
冷たいベンチに腰掛けてしばしの休憩タイム。
非日常性を纏う美術館に向かう前、一度自分自身をリセットしてフラットな状態にするための大切な時間です。
冷たさに身を任せるうちに、感覚が研ぎ澄まされていくように感じます。
建物を構成するコンクリートのすべすべした手触りと冷んやりした触感に惹かれます。青みを含んだグレーの色味にも魅力を感じます。
クールなコンクリートに耳付き一枚板を使った木のベンチが自然の温かみを添えていました。
エントランスで切り取られた青空のように、絶妙なバランスで建物と自然が共存しています。
企画展は撮影が許可されていました。
美術館での鑑賞方法には、決まったルールはないと思います。
もちろん、作品には触れない、大きな声で感想を述べ合わないなどマナーさえ守れば、後は自由に歩いて回れば良いと思います。
私のお勧めは、音声ガイドを借りることです。大抵500円くらいで借りることができます。作品の前に立ち、専門家の説明に耳を傾けながら鑑賞すると、新しい気付きがあり、ストンと腑におちることがあります。
以前、ニューヨークのイサム・ノグチ庭園美術館で、日本語でガイドをしてくれる女性から作品の説明をしてもらいました。
彫刻を見る位置、角度、窓の向こうに見える景色とのバランスなどを細かく教えてもらいながらの鑑賞体験は、今でも記憶に残っています。
それ以来、音声ガイドを借りることが多くなりました。
撮影中もまたその後、写真を見返しながら自分がこの美術館のガイドをするならば、どんな風にストーリーを組み立てるのかを考えました。
まず第一に他人の言葉を借りるのではなく、自分の言葉で話したい。
さらに押し付けがましくならない程度の説明を相手の歩調に合わせてすることを心がける。
イサム・ノグチ庭園美術館の女性のように、心にストンと落ちるような説明ができるまでには、もう少し努力と語彙が必要だと感じました。
兵庫県立美術館は、阪神電車岩屋駅から徒歩8分。
駅舎を出ると建物が見えます。
ご参考になればと思います。
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