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嘘つきの主演女優賞

嘘をつくのが昔から上手かった。
あいつは嘘つきだから関わるなと言われたこともある。
でもそれは私にとっては武器の一つだった。
自分を、周りを守るための。
そして今日もまた一つ。
200%の嘘を鷹揚とした語り口で口から吐き出す。
きっかけは祖母の一言。
「肌着が3枚無い。〇〇(私の名前)が昨日の夜二階へお母さんに確認しにいくと持っていった」
とのこと。
実はこの話の内容は全部間違っていて、祖母の物忘れと断片的な記憶の結合からできている。
無いという肌着はもう洗ってしまってあるし(ただし一枚は洗濯カゴの中)、私はそのものを二階へは持っていってもいない。
それは家族が証人であり、誰も私が祖母の肌着に関与していないことは知っている。
しかし祖母は頑なに私がやったのだと繰り返した。
後に母も言っていたが、あの言い方は暗示にでもかかっているようで鬼気迫る何かを感じて怖かったという。
確かに私がやったんだから、という主張はまるで悪人を暴き出すようなそれだった。
けれど私もたいした女らしく、そんな祖母に200%の嘘で対抗したのである。
あぁ頑なになった祖母は何を言っても聞き入れてはくれない。自分の世界に入って、しまいには私がボケて馬鹿になったってみんな思ってる。こんな人間生きてる資格ない。死にたい。とはじまるのだ。
そんな祖母に200%の嘘をぶっこむ私は自分で言うのもなんだがなかなかに肝が据わっている気がしなくもなくもない。
祖母が自分の主張が全てだと言うのなら、その世界を現実のものとしてあったことにしてしまえばいい。
私は昨夜祖母の肌着を3枚二階へ持って行った。
そして母にそのことを確認した。
それを一つ残らず肯定してやるのだ。
そこに小さな嘘をひとつ、ふたつ、みっつよっつと混ぜ込みながら。
あたかも全てが真実かのように。
嘘が昔から上手い自分にとっては造作もないことだった。
正直、私はこうやって嘘をつくスキルを家で無意識のうちに学ばされていたのではないのだろうかと今では思っている。
あまりにもナチュラルにそれらしく出てくる嘘に、一緒に肌着を探していた母と妹からは「嘘がうますぎて主演女優賞ものだわ」と言われた。
私にとって嘘は簡単につけてしまうものなのだ。
だからこそ、他人からは信じてもらえない人間として育ってしまったのかもしれない。
でも、最近ではそれも仕方のないことだと思ってもいる。
それに私も何でもかんでも嘘をつくわけじゃない。
必要な時に、必要な分だけ。
その時はきっとまた主演女優賞並みの演技ができるのだと思う。


とりあえず…….疲れました。
おやすみなさい。


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