立場と地獄。


学生時代、ライブ会場で、グッズを売るアルバイトをしていた事がある。

当時、バイトリーダーと呼ばれる、そのバイトをフリーターでやってる20代後半(と思われる)女性たちがいて、
やる気は素晴らしいのだが、とにかく、当日やってくる学生バイト達に怒りながら、
走って!
急いで!
ちゃんとやってください!
とガミガミと怒りながら、
でもリーダー同士は、仲良くキャッキャやってるという光景を、よく見ていた。

そんなバイトリーダー達は、バイトの派遣を取りまとめる派遣会社の人達から、
君たちがいないと現場回らないよ〜
と言われ、まんざらでもない感じで頑張っていた。

ある日、当日入ってたバイトが、質問があり、たまたま近くにいたスタッフに話しかけた所、どうやらそのスタッフが、当日出演するアーティストの所属事務所のスタッフだったようで、
俺に聞かれても分からないとなり、
俺に聞くなよとなり(ここも問題だがw)
所属事務所→グッズ担当者→バイト派遣会社→バイトリーダー&バイトへと指示が降りてきて、
自分の担当の先輩バイトにだけ質問しろ!と怒られるという出来事があった。

その時に思った。
偉そうに指示してるバイトリーダーでも、
そもそも、この興行の大元の会社の人には認識は愚か、質問も出来ないわけだな、と。

君たちがいないと現場回らないよ〜。
別に人がいりゃ回るし、替えなんて、いくらでもきくし、
別に当日バイトとさほど時給も変わらんし、
本質的に、その人が必要とされてる訳じゃない。
人手がいりゃいい。

世に言う、バイトリーダーを絵に書いた人達だなと学生ながらに思った。

彼女たちが、それでいいなら全然いいんだけど。
(ここは本当に。結局は本人次第だから。)
私はこうなりたくないな、と。
やる気の搾取だな、と。
ちゃんと必要とされたいな、と。

それから、1年後、私は、その日興行していたアーティストの事務所に新卒で入社した。

それから数年、ライブ現場でグッズ売り場に行ったら、
あの時のバイトリーダーがいて、グッズを売ってくれていた。

走って!急いで!と怒鳴っていた彼女は、
今度は、私には話しかけられない訳である。

こうはならない、と思ってた自分は、
確かに、こうはならなかった。

が、思うわけである。
立場とはなんなのか。

別に、彼女は彼女のままだし、私は私のままである。
別に私が偉くなったわけでもない。

立場が人を作る、とよく言うけど、
見えない立場差みたいなものは確実存在してるんだなぁと思って、何とも言えない気持ちになった。

その後、仕事で、いわゆるチームの1スタッフとして働いていたのだが、
その当時、上の人間に対して、あーでもないこーでもないと文句を言いながら働いてた訳だが、
気づけば、自分がプロデューサーという立場になり、
今度は気を使われる立場になってしまった訳である。
時として歳上からも気を遣われたりして。

自分がポカしたら、拘束したスタッフに、その期間給料は払われない訳だし、
その期間、優秀なスタッフが無駄な休みになってしまう訳である。

そんな事を考えると、なかなかにしんどい訳である。
でも、言えないよね、そういう立場の人間なんだもん。

立場が人を育てる。

今思うことは、そういう事はあると思う。
でも、別に私が偉くなったわけではない。
ただ、その立場にいるだけ。

ただ、仲良く楽しく働きたいと思ってただけの自分だが、
楽しいだけではダメになってしまった。
時には厳しく言いたくない事も言わないとダメだし、
平らな道だけを歩けなくなってしまった。

この先には何が待ってるのかは、正直、見えてない。

頼まれた事をやってる方が余程楽である。

以前、それはそれは、沢山の指示を出してくる先輩とペアで働いてた時、
とにかく日々、大量のタスクをこなしていた。

あまりにも指示が多いから、当時、それをゴミと呼びw
私は最高のルンバを目指す!と言っていたww
ポイントは、ただのルンバではなく、最高のルンバ。
次のゴミ(指示)を予測し、動けるルンバ。

でも、その先輩が辞めるとなった時、
あー今度は、自分で自分に指示を出して、こなさないといけないのか、と。
いつまでも、ゴミを待ってるルンバでは駄目なんだなぁと思った。

それから数年し、もう誰も私に明確なゴミは投げない。
(ざっくりとした指示はあるけども。)
つまり、これからは自ら考え、自らゴミを出さないといけない訳だ。

それはそれで、想像よりずっとしんどい。

それは、その立場になってみて気づいた。
文句を垂れてただけの頃には分からない、苦しみである。

正直、時として戻りたくなる時もある。
文句を垂れてただけの頃に。
いや、なんなら、学生バイト時代に。
人手、として存在していた頃に。

そして今になって分かるのは、人手も本当に必要で有難い存在であるということ。
だって、いないと成り立たないもん。

そんな根本的、かつ大事なことに気づくのに、
12年の時間がかかった。
干支が12年で1周な事には、それはそれで意味があるのか。
まぁ、ひとまず1周したということで。

今を続けた先に、どんな景色があるんだろうか。
次、2周した時は何を思ってるのだろうか。

立場が人を育てる。
その立場にならないと、見えない景色というものは確実にある。

そして、それぞれに地獄はある。
それは外からは分からない。

きっと、バイトリーダーにも地獄はあったし、
派遣会社にも地獄があったんだろう。
見えてなかったし、見ようとしてなかっただけで。

全ての人のことは分からないから、
頑張って想像力を働かせながら、
一生懸命働くのみである。
誠実に。信頼を損なわぬように。

そしたら、また次の立場が来て、地獄が来るんだろう。
たまには楽園もよろしく。

て感じだが。笑

あー桜が満開ですな。

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