自分のワクワク感をスタッフに届けることが、良い店づくりの秘訣です!
石澤沙織(いしざわ さおり)さんは、札幌千秋庵の店舗運営部のスーパーバイザー(以下、SV)として店舗スタッフを支える大切な存在。石澤さんの持ち前の明るい笑顔は、店舗スタッフを支える大きな力となっています。今回の【一日千秋】では、SVとしての仕事の魅力や、その仕事に就いた経緯、現在の業務内容について伺いました。
入社のきっかけ
― 石澤さんのご経歴をお聞きします。
石澤:私は北海道の札幌市で生まれ育ちました。幼い頃から「モノづくり」や「イラストを描くこと」が好きで、コンピューターグラフィックスの専門学校でCGと動画制作を学びました。CGに興味を持ちながらも、雑誌デザインへの関心が高まり、卒業後すぐにデザイン会社に入社し、札幌市内の飲食店情報を提供するタウン誌の制作に4年間携わりました。
当時は雑誌を2冊担当していたので常に締切に追われていました。お客様からの修正依頼が夕方に届き、校了が終わるのはいつも終電間際でした。締め切りが重なると夜明けまで仕事をすることもあり、徹夜が続いたため、この仕事を続けるのが難しいと感じ、出産を機に退職を決意しました。
少し子どもが大きくなったタイミングで、カフェでバリスタの見習いとして働きはじめました。私はどちらかというと一人で過ごす時間が好きで、それほど外交的な性格ではありません。ですが、学生時代は飲食店やレストランで接客のアルバイトをしていたこともあって、接客をしているとスイッチが入って積極的にコミュニケーションが取れるタイプだったんですね。カフェでお客様にコーヒーを淹れたり、ギフトを作っているうちに接客業の楽しさを再認識しました。
― 千秋庵製菓に入社したきっかけは?
石澤:子育てが落ち着いたので、本格的に接客業をしてみたいと思っていたとき、かつて大丸札幌店にあった札幌千秋庵のスタッフ募集を見つけて、「接客の仕事をするなら、百貨店での勤務を経験してみたい」と思ったことがきっかけでしたね。
― 入社当時はどのような仕事をしましたか?
石澤:売店課(現在の店舗運営部)の販売職として勤務することになりましたが、最初は包装や品出しのトレーニングを目的として本社工場の物流業務課で働きました。その後、本社工場の1階にあった店舗でスタッフとして実務経験を重ね、ようやく大丸札幌店内の札幌千秋庵に勤務することになりました。2020年には新型コロナウイルスの影響で勤務体制が大きく変わり、午前中は大丸札幌店、午後は本社工場の物流業務課で品出しをするという日々を過ごしましたね。そして、本店がリニューアルオープンするタイミングで本社から声がかかり、売店課の正式なスタッフとして配属されることになりました。
― 本社の売店課に配属された時は、どのように感じましたか?
石澤:正直に言いますと…販売スタッフという立場から、いきなり複数の店舗を管理する役割を任され、プレッシャーを感じることもありました。すべてが初めてで手探り状態で…。ですが、本社で売店課の仕事を任されたとき、「これは私にとってのチャンスだ!大変でも挑戦してみよう!」と、与えられた指示に従いながら試行錯誤を重ねました。最初は先輩スタッフの指導のもと、担当店舗の巡回、販売商品のPOPや価格の準備、商品の発注管理、陳列や店舗レイアウトなど、店舗運営に関わる様々な業務を経験し、徐々に一人で運営を任されるようになりました。大変ではありましたが、もともと「モノづくり」が好きだったので、ゼロから店づくりをする過程を楽しむことができましたね。
SVの仕事について
― 現在の石澤さんの仕事内容を教えてください。
石澤:現在は、店舗運営部のSVとして、直営店12店舗のうち8店舗のマネジメント業務を担当しています(取材当時)。
具体的には、
・店舗の管理運営業務 全般
・店舗スタッフの勤怠管理、教育
・店舗の売上管理
・店舗巡回
などの業務が中心で、「店舗が毎日スムーズに営業できるようにすること」がSVの役割です。
一日の働き方は日によって異なりますが、
・午前:本社で担当店舗の売上や商品動向などを確認する
・午後:店舗巡回~各店舗のスタッフとコミュニケーションをとる
というのが主な流れです。
私の場合は、担当する各店舗を週に1~2回は確実に巡回します。店舗巡回には様々な目的があります。例えば、販売計画の説明や共有、新商品や季節商品の配置、販促POPやプライスの確認、スタッフとの面談などが挙げられます。特にスタッフのケアはSVの重要な業務の一つです。担当店舗を合わせると約50人以上のスタッフがおり、店舗で作成されたシフト表に基づき、できるだけ全員に会えるように巡回スケジュールを組んでいます。会えなかったスタッフがいた場合は、そのスタッフの出勤日に合わせて巡回を行うようにしています。
次に、店舗の売上管理についてです。売上目標を達成するためには、商品の在庫を適切に管理することが重要な役割を果たします。通常、発注は店舗に任せていますが、発注量が売上目標達成に適切かどうかを検証します。
新商品の販売開始時や新店舗のオープン時には、運営が安定するまでスタッフとして接客に参加し、サポートを行います。
― 店舗運営において、SVの使命についてどのように考えていますか?
石澤:SVには本社と店舗の橋渡し役になるという役割があると考えています。
たとえば、店舗スタッフの人事について意見を求められることがあります。SVとしてスタッフの個々の特性や接客の長所、伸ばしたい点を具体的に伝えることで、それぞれの成長の機会を広げることができます。これはSVにしか果たせない大切な使命だと感じています。そのために、巡回を通じてスタッフの性格やスキルをできるだけ把握するように努めていますね。
― なるほど…。その中で心がけているポイントはありますか?
石澤:私が心がけていることは3つあります。
1つ目は、「スタッフ一人ひとりと直接話すこと」です。
店舗で私は必ず、「何か困っていることはありませんか?」とその場にいるスタッフ一人一人に尋ねるようにしています。日常の会話やコミュニケーションを通じて、業務中には話せない体調の変化や抱えている問題、個々の考えを聞き、気持ちに寄り添えるように努めています。
2つ目は「チームとして店づくりをすること」です。
売上目標を達成するためには、チーム全員が同じ目標に向かって努力する必要があります。スタッフ全員で、お客様が快適に買い物ができる店舗をつくり上げたいと思っています。そのためには、スタッフ間で業務を共有し、チームワークを重視しながら、それぞれのスキルを向上させていくことが大切です。
3つ目は「一人ひとりの考えを引き出し、その人の持ち味を生かす」ことです。例えば、お客様からの要望があった場合、私たちSVがただ指示をするのではなく、「まずは、皆さんで考えてみましょう」「調べてみましょう」と提案し、スタッフ一人ひとりのアイデアを引き出すようにしています。
石澤:現在、店舗運営部では「山親爺の試食品を店頭で声をかけながら配布する」という販促方法を推進しています。しかし、「おすすめをしても手に取っていただけない」「人前で声を大にするのが恥ずかしい」と感じるスタッフもいるのです。そのような時は、「どのようなおすすめであれば、お客様が食べてみたいと思うでしょうか?」とスタッフに問いかけます。単に「指示されたから実行する」のではなく、「みんなで盛り上げていこう!」という意識を持ってもらいたいのです。
試食品配布の目的は、お客様に札幌千秋庵の店舗や商品に関心を持ってもらうことにあります。この目的を忘れなければ、どのような方法であってもその人なりの方法があると私は考えています。人前で大きな声を出すことに抵抗がある場合は、お会計時に一言添えて試食品を渡す方法もあります。方法は多様であり、無理に一つの型にはめる必要はありません。それぞれのスタッフの個性や特長を活かした方法でチャレンジしてもらいたいと考えています。
お店づくりへの取り組み
― お店づくりに取り組むなかで、意識していることはありますか?
石澤:私は、お客様が商品選びの楽しさを感じられるような店舗作りを心がけています。店舗スタッフ全員が、何をメインに販売するかを理解し、お客様に直感的に伝わる店内レイアウトを目指しています。そのためには、会社のビジョンや施策を聞いた際の自分の感情や情熱をスタッフに伝え、共有することが重要だと考えています。
山親爺のパッケージリニューアルの際は、CMソングをYUKIさんが歌い、蔦谷好位置さんが曲をアレンジし、CMのイメージに合わせて商品パッケージを一新しました。私自身が「楽しい!」「お客様の目を引くに違いない!」とワクワクが止まらなくて…。その興奮をどうスタッフに伝えるかを考え、店舗で一人ひとりに情熱を持って伝えることに専念しました。その結果、スタッフの気持ちも自然と高まり、自発的な行動につながることを実感しました。
― 石澤さんのワクワク感が伝わったことで、みなさんに自主的な動きが生まれたんですね! 何か苦労したことはありますか?
石澤:そうですね…。実際、最初はスムーズに進まず、リニューアル開始後の1ヶ月間は多くの課題がありました。企画の意図や雰囲気は伝わるものの、実際の運用方法が異なることも…。店舗によっては、商品補充や陳列、レジ操作や接客などに時間が取られ、試食品の配布に至らないなど、チーム体制が整わない場合もあります。「試してみたけれどうまくいかない」という相談には、「それでは、この方法はどう?」とアドバイスをし、程よい距離を保ちつつ、過度に介入せずにサポートします。各店舗には異なる課題がありますが、店舗を一つずつ訪れ、課題解決に取り組みたいと思っています。
仕事のやりがいや楽しさ
― 仕事をしていく中での喜びや楽しさ、やりがいを感じるところは、どのようなところですか?
石澤:今回のリブランディングで、私は全店舗の山親爺のディスプレイを考案するという大きなチャンスをいただきました。各店舗の陳列棚のサイズを測り、POPやポスターなどの販促物を準備し、山親爺の箱がどのように配置されるかを縮尺図面に描きながら、全店舗のレイアウトを完成させました。進行中は必死だったこともあり、時には大変だと感じることもありましたが、新しいパッケージが全店舗に整然と並んだ光景を見たとき、「やった!」というの達成感と喜びでいっぱいで、苦労以上に喜びが勝りました。形のないものを形にしていく過程を楽しみましたね。
また、SVに就任してから、ノースマンのリブランディング、生ノースマンやコラボレーション企画、山親爺のパッケージリニューアルなど、新しいプロジェクトが次々と始動しました。全ての始まりに関わることができるのは、本当に楽しいですね。その興奮とワクワクを店舗のスタッフに共有し、スタッフが良い影響を受けていると感じる瞬間は、本当に嬉しいです。
― 実際にスタッフが変わってきたな…と感じることはありますか?
石澤:そうですね。一番変化を感じるのは、どんなことにも挑戦する気風が育ったことですね。「〇〇だからできない」という考え方ではなく、「〇〇すればできるのではないか」と考えられるようになってきたなぁ…と感じています。
一人で頑張るのではなく、店舗スタッフ全員で協力し、チームとして機能できるようになったことは、大きな前進です。単に「やってください」と指示するのではなく、意見やアイデアを引き出し、全員が考え、実行に移せるようになったことが、最も大きな変化だと思います。
巡回中に問題やトラブルの報告、悩みの相談を受けることもありますが、最近は自分たちのアイデアや考えを共有してくれることが増えてきました。様々な意見や考えを出しやすい環境を整えた結果、良い影響が出ており、それが私のやりがいになっています。
― 山親爺のリニューアル後、お客様からの反応はいかがでしたか?
石澤:デザインとテレビCMが好評で、多くのお客様から店舗で声をかけていただきました。特に記憶に残っているのは、試食品を試した若者が「うまいじゃん!」と言ってくれたことですね(笑)。お客様の満足そうな表情や、直接いただく温かい言葉は、私たち店舗スタッフにとって大きな喜びですね。
これからのこと
― これから挑戦したいことはありますか?
石澤:新しいことに日々挑戦することで、学びはより深くなると感じています。SVとして次のレベルを目指し、さらに多くのスキルを習得したいです。新しい挑戦を重ねながら、自分の考えや感情を自分の言葉でしっかり伝えられるようになりたいですね。
プライベートでは音楽が好きで、いつも身近に音楽がありますね。「集中したい時にはこの曲を聴こう」と決めて、邦楽、洋楽、ロック、R&Bなど様々なジャンルを選んで楽しんでいます。お気に入りのアーティストのライブに出かけたり、野外フェスで楽しんだり、新しい音楽に触れるのが大好きです。私にとって音楽は、一番近くで気分転換やモチベーションを高めてくれる大切なものですね。
|編集後記|
石澤さんは、SVとは『店舗スタッフとチームとなって目標を達成するために尽力する仕事』だと話していました。みんなで考えながらつくり上げていきたいと店舗スタッフとイキイキと話す姿は、エネルギッシュでありながらも温かみがあります。常に前を向きながら、みんなを盛り上げてくれる頼れる存在として、さらに力を発揮してくれるでしょう。これからもよろしくお願いします。