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「ストリップ劇場がある街、あった街」出版記念イベント 東京篇報告
去る2025年2月22日、23日と東京で行われたトークショー。
22日は池袋。ジュンク堂書店池袋本店。都築響一氏との対談である。
このジュンク堂でのトークイベントが決まった時、私はすぐに都築氏に連絡し、対談相手をお願いした。私のボキャブラリーの足りなさをフォローしてくれるのは、都築氏しかいないと思ったからだ。都築氏とは20年以上前からの知人で話しやすさもあった。
当日。出版社「寿郎社」の社長も札幌から上京して頂き、打ち合わせは「じゃあ話は、本の事についてですね」という位で始まった。
一般書店ジュンク堂でのトークイベント。私は内心怖かった。「集客できなかったらどどうしよう」「内容が貧弱にならないためには」等この当日までの間、頭の中ではグルグルといろんな事が渦巻いていた。
そんな緊張を、都築氏のほんわかしたオーラが解きほぐしてくれる。
話は、私は「内側」の人なのに、どうして「外側から」の視点で書けるのか、ということ。都築氏曰く
「普通内側の人が書くと自分の内面に終始し、もっとドロドロした内容、すったもんだの話になり、そこが面白いのだけど、そうならない所が早乙女さんなんですね」
という視点で広げられていく。
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そう言われて自分の意識に気づく。私は自分の内面をできるだけ書きたくない。もっと「事象」として捉えているし、事象として残していきたい。事象を残すための、言葉つなぎに自分の体験談を挟む、という方を意識している。これはこの本だけでなく、今までの本、記事も含めての私の考え方である。「自分の記録を残す」というより「事象をより具体化するために、自分を引き合いに出す」という方が当たっているだろう。
90分はあっという間に過ぎていく。ストリップ劇場の演目の話になり「女王様調教ショー」の話に食い付いた都築氏。「どんな内容なんですか!」。
そこで私は来場してくれていた夜羽エマさんに壇上から話を振った。エマさんは踊り子であり、女王様であり、先輩のねぇさんなので、振ってみたのだ。そして思った通り女王様ショーを具体的に話してくれ、会場の雰囲気を「エマワールド」に変えてくれ、いい話が聞けた。
「調教の最後はお聖水をあげるんですよ」
ジュンク堂でこんな話は聞けまい。
トーク後はサイン会。この時に30年振りの飲み友と出会う。いやーびっくりした。彼は日芸文藝学科の学生だった。彼は若き学生だったが、好奇心旺盛で、私のことを面白がり日芸の文化祭等に呼んでくれ、校内で自縛ショーをさせてくれた。彼の就職後、音信が途絶えた。時折、どうしているのか気になっていたがここで逢えるとは!彼に再び出逢えた事も、出版出来たからこそ、と思う。
寿郎社社長と都築氏、3人で打ち上げ。池袋の路地裏もつ鍋やに入る。赤提灯が掛かる木造の居酒屋。杯を重ねるのは私だけ。でも話は尽きない。晴れやかな打ち上げとなるのも、イベントが概ね成功した事と、都築氏の人柄に他ならない。
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翌23日は都築氏のコレクションミュージアム「大道芸術館」にてのパフォーマンス付きトークイベント。
住所は「向島」である。昔、東京の芸者さんたちの街。置き屋があり料亭がひしめいていた所だ。現在も料亭が残り、昔ながらの街並みである。
そこに昔の料亭のような大きな暖簾が下がり「大道芸術館」の入り口がある。呼び鈴を押し、鍵を開けてもらうと、、、。秘宝館で展示されていたエロティックな美女たちがお迎えしてくれる。
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都築氏は、潰れていく秘宝館の展示物が破棄されていくことに危惧していた。貴重な遺産が何も残らない事はいけない、と引き取る決意をするも、運搬料が莫大にかかった。更に倉庫にしまっていては意味がない、人々に見てもらわなければ、といつも口にしていた。そしてようやく2023年にコレクション館がオープンしたのだった。
今日の会場は2階にあるカウンターバー。ラブドールが雛壇に鎮座している。まずは10分程の切腹ショー。
何となく空間をイメージして真っ赤な着物と能面もどきの面姿。曲はプロコルハルム「A Christmas Camel」。この曲はアルバム「青い影」に入っている曲で、10代の頃から聴いていた曲。プログレはSMに使いやすい。曲展開が大仰なので感情表現がしやすい。そういえばストリップデビューの「オサダゼミナール」(このネーミングは都築氏のツボにハマったのか、何度も面白いと絶賛していた)の長田英吉氏もキングクリムゾンを使っていた。
2曲め坂本龍一「andata」。この曲はここ何年も気に入って使っている曲。晩年の坂本氏の曲で、私の死に様と(私は架空だが)リンクしてくる。まさに「悲愴」な感じがするのだ。今日の刀は模造刀「雪」。銀装で凛とした空間を作ってくれる。
そして空間が私に語りかけてくる。「もっとこっちへいらっしゃい。さらけ出して」もちろんこれは私の妄想だが、つまりはやりやすい雰囲気、という事。心地よい。つい熱中し、音楽内で終わらなかった。
終わってすぐ、トークへ。これは私が望んだこと。中途半端に着替えると空気感が変わってしまうので、すぐの方が私もやりやすい。
本日のトークは昨夜の復習もしつつ、私の成り立ちについて。幼少期、裸産業に入るきっかけ、ストリップデビューなど。私はビールを片手にラフに話す。途中都築氏から「今日は限られたメンバーなので、もっと具体的に話してもらっていいですよ」と。そうそう。私は割と乱暴な口利きなので特に近頃注意して話すことが多い。今主流のコンプライアンスとかあるからね。
2時間は過ぎていたか。本日も都築氏の誘導質問に気持ちよく答え、あっという間に時間は経過した。2日間連続でいらしてくれた方2名。本当にありがとうございます。今日も久しぶりな知人に囲まれる。なんとも嬉しい。
そしてこの空間が離れがたい。そういえば、私も秘宝館巡りが好きだったが、ここで一杯飲めたらなぁ、といつも思っていた事を思い出す。
この出版で得られたことは本当に大きい。今回のイベントにご来場くださった皆様、本当にありがとうございました。今後も私のイベントとして拙著に関したイベントをやると思うが、本書で書ききれなかった事も含め、まだまだ進化していくであろう。