「夢」
夢を見ました
幸せな夢だと思います
多分
幸せだったと思います
もう覚えていないけれど
私の脚が折れて
右手も折れて
やがては左手も折れて
ただの塊みたいに路上に転がって
気づいたら 石ころと並んで座ってた
幾組もの家族が通り過ぎてゆく
石ころと私との前を
幾人もの足音と
後ろ姿と
影が
ふと見れば、折れた私の手も脚も
そのゆき過ぎてゆく群れの中にいるじゃないか
身軽になった手脚は嬉々として
スキップしながら、小踊りしながら
やがて人込みに紛れて見えなくなった
石ころと私は、置き去りのまま
夢から覚めて見回してみれば
私の脚も手も 折れてもいなければ
そのままそこにあったけれど
一度折れて私から去っていった
あの手は 脚は 何処へいったんだろう
行方は知れぬまま 夢は覚め、
行く先を示すものは 何処にも残ってはいない
私はもう一度 眺めてみる
今 この手は この脚は
一体誰のものなんだろう
―――詩集「対岸」より
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