「迷子」
昔のことです
遠い遠い 昔のことです
誰かが呼んだ 名前を呼んだ
私に向かって
誰かの名前を
人違いかと首をかしげ
そのまま歩いてゆこうとするのを
追いかけてきて 呼びかける
私ではない 誰かの名前を
あなたはだあれ?
私はあなたの誰かじゃないわ
あなたはだあれ?
私の名前は
私の名前は
云おうとして 声が詰まった
私の名前は
何処へいった?
私の名前が
見当たらない
誰かの名前で呼びかける
誰かが私を呼び止めて
追いかけてまで 引き止めて
それでも私の名前じゃない
それは私と違う人
それじゃぁあなたのお名前は?
こたえが こたえが見当たらず
私は途方にくれるばかり
名前が 名前が 何処へやら
帰ってこない ままなのです
―――詩集「対岸」より
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