「真夜中の冷蔵庫」
真夜中の冷蔵庫
オレンジがかったあかりで充満している
しんと静まり返った冷蔵庫に耳を澄ますと
じっと耳を澄ますと
聞こえてくる 聞こえてくる
ぷつぷつ
ぷつぷつ と
何の音
何の音
発酵してゆく誰かの音が
ぷつぷつ
ぷつぷつ と
徐々に耳の内奥に 垂れ込んでくる
冷気はやがて冷気ではなくなり
部屋の温度と冷蔵庫とは
境がなくなり
境界線など何処へいったのやら
真夜中の冷蔵庫の前で
何を見つめるでもなく
両眼は何をうつすわけでもなく
真夜中の冷蔵庫
気が付けば 朝になる
―――詩集「対岸」より
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