2020.0401 uso(嘘)|人生の主役はいつだってわたし
タイトル:uso(嘘)
公開日 :2020.0401
主人公 :わたし
出演者 :母
今日はエイプリルフール。
いつもは楽しい嘘をつく。クスっと笑える嘘をつく。
今年の今日は少し違う。
未知のウィルスで自粛モードの世の中。みんなが笑える嘘をつけるだけのスキルはわたしにはない。
結婚をし親元を離れて16年経つ。
母親は、4月1日にいつも嘘をつく。
「ちいちゃん!お母さん、あんたの家の近くの駅まで来とるけん迎えに来て。 」※ちいちゃんとはわたしの愛称である。
「えー私は実家の家の前におるわ!すれ違いやな! 」
そんな他愛のない嘘でエイプリルフールを楽しむ。
今年の今日は少し違う。
いつもならかかってくる電話が来ない。
このような状況下なので、忙しいんだろうと思いつつ、なんだか不安になる。
夜遅く電話があった。
母であることはすぐに分かったので、安心して電話を取る。
いつものふざけた声とは少し違うためらいのある声。
「あんな、あんな……、お母さんガンなんよ。 」
今年の今日は少し違う。
嘘であってほしいと電話口で泣いた。
今すぐにでも帰りたい。
帰ってお母さんのそばで寄り添っていたい。
「大丈夫だから 」と背中をさすってあげたい。
なのに母は厳しく「帰ってこられんよ!」
病院は未知のウィルスに敏感な時。
病院に来るのは患者とその家族。
娘とは言え県外からなんてとんでもない!!そんな風潮だった。
その日の夜は全く眠れなかった。
どうすることもできないことなのに、考えずには居られない。生まれた瞬間からあった大きな愛が消えるかもしれない不安。
翌日、目が覚めると、旦那が熱をうなっている。
現実とはそうゆうことだ、待ってくれない。
どんなに頭で考えてもどうしようもうない。できることからはじめよう。そして笑おう。
その後……
4月に手術をした母の術後は順調である。
入院期間も2週間ほどで、患部も切除できたそうだ。
1ヶ月ほどで今まで通りの生活に戻ることができた。
わたしも9月には会いに帰ることができた。
母の笑顔を見たとき心から安心できた。
1年間は様子をみる。
来年のエイプリルフールはどうだろう。
また他愛のない嘘をつこう。