思考の海、現実の船
自分の考えを断ち切りたくて
アパートに帰宅してすぐにタバコに火を付けた
イライラが治らない日はアイコスでは、どうしてもダメなのだ
ふぅーっと息を天井に打ち上げると、一気に身体から力が抜けた
都会には闘いがある
競わないといけない時がある
だけど自分はそのスピードに置き去りにされる日もある
あぁ、だめだ、また思考の海に潜りそうだ
煙を吸い込むと、不意に昼間の着信が脳裏をよぎった
ぼーっとしながら留守番電話のメッセージを再生した
「あーと、もしもし、お母さんだけど
あんたまた連絡もせんで、元気にしとるんかね」
またどうでもいい事を長々と・・・
毎回この人の話は長いんだよなぁ
「どうせまた一人で落ち込んどるんじゃろ
根暗なんよ、あんたは昔っからほんまに
ええか、母ちゃんいいこと言うからよく聞かれぇよ」
説教だったらそのままメッセージを削除してやろうと思いながら
渋々母親の言葉を聞き続ける
「都会の空はパッと見ると一番明るい星しか見えん
だけども、10秒見つめると小さな星まで見えてくる
ほんでな、30秒見続けると、さらに小さな星の瞬きも見える」
星か、しばらく見てないかも
ガララと窓を開けて、部屋の明かりを消してみた
なるほど、悪く無い
「何が言いたいかっつーとな
あんたは一人で立っとるつもりでも
あんたを思ってくれとる人が沢山おるってこと
一人で被害者ヅラはかっこ悪りぃよ、ええ歳した男が」
先輩、どうしてるかなぁ
夜空を見ながら、地元のツレの顔がぽつり、ぽつりとうかんだ
「踏ん張りな
踏ん張って、踏ん張って、
ほんまにダメだと思ったらな」
あ、やばい泣きそうかも
「こっちで一緒に酒飲もうやって・・・
ヨシ先輩、今日ウチまで訪ねてきたで
年末はあんたと飲みたいて
えぇ先輩じゃな・・・じゃぁ、まぁ、そんだけ、またね」
唐突に話が終わってメッセージは切れた
涙がこぼれそうになって、グッと堪えて、また煙を一気に吸う
あぁ、明日からまた現実の船に乗る
年末の楽しみに向かって、俺はまた思考の海を泳ぐ
そう思いながら、煙が薄れていく夜空を見つめた
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