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なんでもない日

部下のヨシダを行きつけの居酒屋に呼び出した
普段あまり酒を飲まないヨシダは最初は断ってきたが
飯も美味いと説得すると、渋々といった様子で会社から出てきた

「先輩・・・俺、今日」
「あーいいの、いいの、仕事の話は一旦やめろ」

よく冷やしたグラスに入れられた
キンキンの生ビールで乾杯をする

「俺さぁ~、上京組なんだよね、ヨシダは都内育ちだろ?」
「ええ、まぁ」
「初めて東京来たときさ、飯も合わないし、言葉も、暮らしも
 全部合わなくてな、一人暮らしも初めてだったし」
「・・・大変だったんですね」

「だけどな、ここで夜中に食うまかない飯、あったけぇんだよな
    ジャーマンポテトが特に最高で・・・」
「先輩、ここでバイトしてたんですか?」
「おう」

先に出てきたお通しを箸でついばみながら
当時から変わらないマスターの後ろ姿をぼんやり眺める

「だからよー、ヨシダ」
「自分が嫌になるときは、あったかくて旨いもん食えよ
 そしたら、明日には忘れてら」
「・・・はい」

ヨシダは、ビールをゴクっと一口飲んでニッと笑った

「先輩、白飯食っていいすか?」
「男の子だねぇ~、食え食え」

明日のプレゼンは巻き返してくれそうだな
安心して、俺も一気にビールを喉に流し込んだ


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こやまさおり

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