見出し画像

二ホンミツバチの養蜂見学(愛知県新城市)

養蜂場を見学させてもらえるということで、愛知県新城市の中村さんを訪ねたのは6月の終わり。20年ほど前、名古屋の友人から分けてもらった二ホンミツバチを新城の自宅へ大切に持ち帰り、飼育し続けているという養蜂名人だ。

本業は製材所を営まれており、材料調達や巣箱づくりはお手のもの。東三河各地には、中村さんを「養蜂の師匠」と慕うお弟子さんが何人もおり、以前は巣箱づくりのワークショップも開催していたそう。

敷地内を案内してもらうと、倉庫脇、庭の一角、通路の途中などに巣箱が点々と設置されている。巣箱の外にまで、ハチたちがびっしりはみ出すほどの大きな群れや、こじんまりと営巣しているらしい大人しい群れ、今は空っぽのものもあった。

巣箱の入り口からは、働きバチたちが行き来する様子も見られた。活動を邪魔しないよう、そっと脇から見守ってみる。小さな体で蜜や花粉をせっせと集める姿は、なんとも健気で愛らしい!

中村さんから、養蜂を始めるにあたってのアドバイスをたくさんいただいたので、忘れないように書き残し。

【1】設置環境

雨風を避けるため、周囲や屋根を木材で覆ってある

・二ホンミツバチの採蜜範囲といわれる2km四方に蜜源があること(セイヨウミツバチよりも範囲が狭い)

・ミツバチが死んでしまうネオニコチノイド系の農薬を使っていない地域(田畑の防虫剤として使われることが多い)

・一か所にたくさん巣箱を置いても、蜜源に限りがある。一か所に置くならせいぜい3箱くらい

・強い風や雨にあたらない場所を選ぶとよい

・ハチが行き来しやすいよう、全面が開けているとなおよい

・雨避けに、巣箱の上に大き目の板をのせ、ブロックなどの重しを置いてもよいが、台風などで風にあおられると倒れてしまうので注意


【2】巣箱

中村さんの巣箱は、何段にも重なった「重箱型」

・以前は一体型を使っていたが、今は重箱型に行き着いた

・巣箱の出入口は縦と横の両方を設けている。縦型は、夏にはばたいて巣箱に風を送る際、風を送りやすい。横型は、巣の中から不要になったものを捨てる際に捨てやすい

・重ねた箱同士をビスで留めてあるのは、分蜂群を取り込む際に、一気に持ち上げられるように

・巣箱の中は、クロス板のみ。人工基礎を張るのが一般的なセイヨウミツバチの養蜂とは異なり、ハチが自分たちでイチから巣をつくっていく



・アリが入り込まないように、底板にビスを打って底上げしてある


・巣箱の最下部は引き出し式になっている。スムシ(巣板をかじる虫)はどうしたって入ってしまうので、こまめに掃除しやすい設計

【3】スズメバチ対策

・巣箱の入り口は、スズメバチが入り込めないサイズに作っておく

・スズメバチが卵を産む夏前に、トラップなどを仕掛けて捕殺する。産卵し何千匹と増えてからよりも、女王バチ一匹の時点で仕留めておいた方が、断然効率がよい

・スズメバチの食糧が乏しくなる秋が最も狙われやすい

・スズメバチの攻撃に合いやすい山奥よりも、ほどよく人けのある場所がよい

・巣箱を置いたらほったらかしではなく、こまめに見回ってやることが大切

【4】採蜜

・採蜜の際は、箱同士をつなげていたビスを外し、枠と巣の間にノコギリなどを入れて切り離す

・重箱の中は、上から「貯蜜」「花粉」「育児」の層に分かれているため、上の段から採蜜する

・一般的には6月と秋の年2回、採蜜することが多い。秋に採蜜した場合は、ミツバチが冬越しできるよう砂糖水を与えること

・中村さんの採蜜は毎年6月のみ。一つの巣箱から大体3.6リットル、全体で12リットルほどとれる

【5】分蜂

・巣箱から出た分蜂群に、用意した待ち箱へ入居してもらうには、蜂球を作りやすい太い木の枝などが近くにあるとよい

・分蜂群を巣箱に取り込む際は、底板を外して高さのある場所に置き、網などに入れた群れを重箱の底に入れる。ハチは上へ上へと飛ぶ習性があるので、自然に巣箱に入っていく

ミツバチへの愛を感じる養蜂現場。本では分からなかった学びがいっぱい!

見学を終えて一番印象に残ったのが、ミツバチを見守る温かい愛情。

巣箱が雨風にさらされないよう屋根などをつける。天敵のスズメバチやスムシがつかないように、こまめに見守り掃除を行う。ミツバチが安心して冬越しできるよう、採蜜は秋だけ。
かわいがっているんだな~というのが、ひしひし伝わってくる。

それに、二ホンミツバチの養蜂はうまくいくほうが珍しい、くらいに考えていた私にとって、こんなに毎年安定して飼育し続けているなんて驚きだった。

「本当に中村さんみたいにうまくいきますかね?」という私たちに、最後は「まぁ、ハチが決めるこったで」と、大らかなひとこと。
ハチたちがこぞってここに棲み着く理由が、分かった気がしました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?