国際機関で働くとは?第二話:組織で生き残り昇進するためには?
どの組織にもあるように、会社に入ると、うまく立ち回って昇進の道に進まなくてはいけない、ということがあると思います。いくら仕事を頑張るだけ頑張って評価が良くても、昇進できないということもあると思います。
それはなぜでしょうか?
それはあなたの味方になって応援してくれてスポンサーになってくれるマネージャーや上司、その他シニアマネジメントの力が使えていないからです。
国際機関で昇進および生き残るためには、スポンサーになってくれるマネージャーや上司、シニアマネジメント層の力がかなり必要になってきます。
今回はどのようなステップや行動でそのような力を得られて上に上がっていけるのか、についてお話ししたいと思います。私が先輩の日本人職員から伺った学びについても触れながらお話ししていきます。
基本的に昇進するためには公募されているポジションに応募するか(世界銀行社員にしかオープンにしていないポジションもたくさんあります)、マネージャーに選んでもらって昇進、または自分のためにポジションを作ってもらってそれに応募する、という3つがあります。どれもマネージャーに気に入ってもらうことが必須となります。なお、マネージャー職への昇進は基本的に公募のみ(世界銀行内のみ、または世界銀行外に対しても募集している場合があります)になります。
1. まずは知ってもらう
まず正社員でもコンサルタントでも働き始めてやらなくてはならないのは、自分のことを知ってもらうことです。1万人以上の社員が120カ国以上で働いているのが世界銀行なので、その中で知ってもらうのはなかなか大変ですが、世界銀行の場合、地域とセクター(教育、保健、インフラ、農業、水、エネルギーなど)に分かれて業務が動いているので、まずは自分の所属するセクター(グローバルプラクティスと呼ばれています)の中で知ってもらうのことが大切です。
その中でも特に大切なのが自分の直属のマネージャーに知ってもらうこと。人事部はありつつも、人事において一番重要なのは自分の直属のマネージャーがサポートしてくれるか、ということになります。なぜかというとマネージャーの意見によって雇用が決まるからです。自分がマネージャーのポジションに応募する際にはその上のディレクターが重要になってきます。いかに雇用するマネージャーやディレクターに自分のことを知ってもらったり、パネルインタビューを行うスタッフ(複数人がインタビュアーになる)に知ってもらったりすることが重要です。また、マネージャーやディレクターは3-4年ごとに変わっていくので(昔はもう少し長かったと思います)新しいマネージャーやディレクターが着任する毎に知ってもらうことが必要です。
自分が専門家である、かつ価値を提供できる、という評判を作って色々な人に知ってもらうためにできることは以下のことです。
<マネージャー以下レベル>
1)最新の調査レポートとその考察などを書いてチームやセクターのメーリングリストに送る
2)プロジェクト文書や調査レポートのフィードバックを募集している時にボランティアでも進んで行う(そして実際に良いアドバイスをする)
3)自分の担当するプロジェクトの良い事例などをシェアしてメーリングリストに送る
4)色々な専門グループのメーリングリスト(教育セクターなら幼児教育、高等教育、教員教育、教育テクノロジー、教育財政など)に入り、有益な情報を提供したりコメントしたりする
5)社内のレポートやプロジェクトのベストプラクティスを共有するイベントを開催してプレゼンテーションをする
<マネージャーレベル>
1)自分のチームが融資プロジェクトを形成したことやその他良い事例や成果をセクターのディレクター、副総裁や担当地域のディレクター、副総裁などにメールで送る
2)ニュースレターなどを作り毎月自分のチームの成果をセクターや地域のメーリングリストに送る
3)ディレクターやその他ステークホルダーとコミュニケーションを頻繁に行い自分のチームのアピールをしたり、良い印象を与えたりする
4)スタッフとコミュニケーションを定期的に取り、サポートしていくと同時に問題解決においてスタッフをサポートしたり、テクニカルなアドバイスをあげたりする(そしてスタッフからの良い評価を得るようにする)
5)新しいイニシアチブなど自分がリードするイニシアチブを作り、リーダーシップ能力をアピールする
マネージャー以下のレベルでは、「みんなのためになるからシェアする」という大義名分で色々な行動をしつつ、それが最終的には自分のアピールにもなります。
実際にそのようなことをして自分の名前を売っている人を見てきました。そのような人たちはたまに、自分アピールに時間を割いている割に部下の管理やメンタリングや実際の仕事はあまりしていない、というような人もいたりするので、それをなかなか見分けらないマネージャーもいるのが悲しい現状です。ただ、噂として回るので、良い評判が得られるようにしておくのは重要です。日本人は自分アピールがちょっと苦手なので、これは勇気を振り絞ってやることが必要です。
私は教育テクノロジーの専門家として確立するために関連するプロジェクトを行なってその結果をシェアしたり、色々なイベントを開催してプレゼンをしたり、などを行なっていました。例えばインドやケニアのオンラインの転職サイトのデータを利用して労働市場データをAIで分析したり、COURSERAなどのオンライン学習プラットフォームを大学に使うとどうなるかというパイロットプロジェクトをタジキスタンで実施したり、デジタルスキルをどのくらいアフリカの大学院生が保持しているのかということをA Iを使ったプラットフォームで分析したり、などを行いました。その結果、日本人唯一の教育テクノロジースペシャリストになれました。
2. マネージャーや上司を助けてあげよう
マネージャーやディレクターに好かれるには、みんなに役立つ人、と思われることが必要です。そのため何かマネージャーやディレクターが頼んできたことは早く期待以上に仕上げたり、何かできないか探して提案したり、何かして欲しいか聞いたりして、マネージャーやディレクターのサポートができることをアピールするのも一つの手です。そうすると信頼を築くこともでき、自分のこともよく覚えていてもらえます。
3. お願いははっきりと伝えよう
世界銀行はアメリカのワシントンD.C.に本部があることもあり、働くカルチャーがアメリカっぽいのが特徴です。そのためアピールをしたり、直接的にコミュニケーションを取ったり、ということも多いです。マネージャー以下のポジションのスタッフは1年に2回ほどパフォーマンスミーティングがマネージャーとあるのですが、その際には自分の今後のキャリアについて何をしたいのかはっきり言ったり、例えば何年後にプロモーションをしたいからこのようなことをしたい。そのためにこのようなプロジェクトに入りたい、など具体性を持って話すことも重要です。カントリーオフィスに行きたいのであればそのようなことも伝えておくことも重要です。プロモーションしたいということを伝えていないとマネージャーもこの人は今のポジションのままでいいのだ、という風に考えてしまったりするので、マネージャーの頭の中に自分が進もうと思っている方向性をインプットすることは大切です。
4. メンターをつけよう
世界銀行にはメンター制度というものがあるので、それを積極的に活用して、年次の高いスタッフにメンターとなってもらって色々アドバイスをもらうことができます。または上司で自分と気が合ったり、助けてくれるような人にメンターになってもらってアドバイスをもらうこともできます。このようなメンターがいるとどのように行動していけばわからない時にも助けてもらえたりします。また世界銀行の出資元で理事として参加している日本の財務省が、日本人職員を増やすことを目標としているため、日本人職員のためのキャリアサポートは有志で色々と行われていて、そのような集まりに参加して先輩職員からアドバイスを聞くのは非常に重要です。例えば私もどのようなプロジェクトに入るとアピールできるのか、成果をより出せるのか、などについてアドバイスをいただくことができました。頑張って働くなら、より注目されているようなプロジェクトに関わって働くと、同じ時間と労力を使っても、成功した時の評価が変わってくるので、プロジェクトの選び方なども重要になってきます。
5. 自分の良い評判を作っておく
これは一緒に働いた人に良い印象を与えるために常にやっておく必要がありますが、最後に自分を助けてくれるのは、一緒に働いたことのある同僚や上司だったりします。そのため一緒に働く人とは良い関係を作っておくのが重要です。新しく入ったマネージャーなども、一緒に自分と働いている人に「この人はどうか」などと聞き取りをしたりするので、同僚と常に良い関係を保ち、良い仕事をしておくのは重要です。世界銀行はハイスペの人が多いのでみんな常に最新の情報を読んだりして知識がアップデートされているので、学ぶのを忘れないようにしておくのも大切です。
最後になりますが、世界銀行でマネージャー以上のポジションに進むのはかなり大変で、シニアレベルで定年を迎えてキャリアを終える人もたくさんいます。
最近は一度世界銀行の外に出て色々な経験を積んでまた戻ってくるようなキャリアパスを積む人や、カントリーオフィス(世界銀行が活動している途上国のオフィス)のポジションでの経験をどんどん積んで実績をあげてマネージャーのポジションを受けて受かる人も出てきています。この頃は現場の経験がより重要になってきています。
また、世界銀行に入ると昇進のスピードはプライベートセクターに比べてかなり遅いということを覚えておいてください。1年毎に昇進するのはまずあり得ず、少なくとも数年同じポジションにとどまる必要があります。もしマネージャー職を経験したい人は、他の機関でそのような経験を積み重ねておくのも良いのかもしれません。
次回は世界銀行でどのような仕事があるのか、についてお話しして、皆さんが少しでも国際機関で働くことを身近に思っていただければ、と思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?