何度目かの誕生日おめでとう
デザートのプレートにメッセージを添えるオーダーをいただく機会がよくあって
昔から下手っぴで苦手な文字も
インクや鉛筆じゃなくて、チョコレートやソースだったら好きで
まだまだ不恰好だけれど、好きだったから下積みの頃からよく書く役をやらせてもらっていた。
誕生日のお祝いには
Happy birthday
誕生日おめでとう
と名前と一緒にケーキとフルーツの脇に添える
チョコレート色の文字が添えられる
それだけだけれど
とたんに"その人だけ"のとくべつなプレートに変わる
贈られるその人はどんな人なのか
何歳のお祝いなのか、どういう人(可愛らしい人、カッコいい人、シックな人、ほがらかな人 etc.. )なのか
そして何が好きで、何が苦手なのか
もしかしたら珍しいかもしれない
そんな質問の数々を贈る人に私は必ず尋ねる。
特別なケーキは作れなくて、普通の、いつものケーキを作る私にできることは
自分のためのひと皿だと思ってもらえるように
細部までその人らしさを詰めること。
チョコレート色の文字、フルーツ
あとはケーキの種類
それだけの材料だけれど
贈る人が、大切な人のあなたをこう思ってますよ
と届きますように。
こんなに何度も
誕生日おめでとうと書き連ねる人生になるとはね。
自分の歳の数よりも
親の歳の数よりも
多くの人の誕生日おめでとうの文字を描いて
幾度ものひと皿を重ねて。
もしかしたら、今日かもしれない
何度目かの
お誕生日おめでとう。