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やってみよう、まずは自分から
今日は、風が強い日だった。
私は仕事だったので、お客さまとの待ち合わせ場所まで急いでいた。
ショルダーバックに、パソコンバック。手にはスマホ。両手塞がった状態で道路脇を歩いていると、近くのごみ収集場所から、強風に吹かれて何個もごみ袋が道路に散乱。
私のほかには20代くらいの若い女性と、60代くらいのウォーキング中のおじさんがいた。
位置的にごみ袋は、おじさんに最も近い場所にあったのだけど、おじさん、チラチラ見てはいるが拾わない。
20代の子はいかにも今からあそびにいきます、という風情でイヤホンもしているしこちらもなかなか動かなさそう。
早くしないと、車がひいてごみ袋が破れて中身散乱しちゃう。
私も急いでいたし、両手は塞がってるし・・いまから商談にいくのに手を汚したくないな・・
一瞬の思考停止。
だけど、ええい!なんのために消毒液を携帯しているのだ!と思い直し、私は走ってごみ袋を拾い、収集場所へ戻した。
あと二個、どこにころがっていっただろう・・と見回すと、
なんと先を歩いていた20代女子と60代おじさんが一個ずつ拾って道を戻ってくるではないか。
私は、なんだかやたら感動してしまい、思わず「ありがとうございます!」と大きな声でさけんだ。
2人は、「なんか自分たちちょっと勇気だしていいことしたよね」と言いたげな、いい顔をしていた。
マスクはしていても、目は笑っている。
このときまだまだ世の中捨てたもんじゃない、と思ったのだ。
車でごみ袋が轢かれて中身が散乱しても、無視はできた。
私たちのせいじゃないもんね、誰かがするんじゃない?と気にしなくても誰からも責められることはなかった。
あとの2人も、気になってはいたのだろう。でも自分から動くのはためらいがあったんだろうと想像する。
誰かが先に動けば、やれる。
それは決して勇気がないわけではないんだ。
私たちはごみ袋を定位置におき直すと、とくに会話もせずそれぞれの往き道へ戻っていった。
女子はイヤホンを耳にはめ、おじさんはまた競歩の姿勢になり、私は仕事へと向かった。
だが、たしかにあの瞬間、この三人の気持ちは繋がったのだ。
風がキンモクセイの薫りを運んできて、私は久しぶりに深呼吸した。
うん、いい朝だった。
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