夏服との今生のお別れ
夏がおわりかけている。夏服も着られるのも、あと少し。そう思うと、急に焦る気持ちが出てきた。「また来年」と束の間のさよならを告げる大人の服と違い、乳児の服は今生の別れになるかもしれない。1年後には、一体この子はどんな大きさになっているのだろうか。
もうすぐ11ヶ月の我が子は、ようやくぐるりと一年を巡る。生まれたばかりの10月は、半袖では肌寒い季節だった。何もわからず、とりあえずおさがりでもらった服を着せた。どれを着てもマッチ棒みたいな手足にはぶかぶかで、着させられている感じだった。
今はもう手足もムチムチで、自分の足ですっと立つ姿にスカートがよく似合う。私が好きな服の傾向もわかり、お気に入りの服を着ている日はテンションが上がって一日ご機嫌だった(私が)。
今日はこれ、今日はこれ。楽しくファッションショーしていたのに、もう夏が終わってしまうなんて。この服を着たこの子にもう会えなくなる。そう思うと、その服を着て過ごした思い出が蘇る。
「気づいたら着られなくなってるから、ぶかぶかでもどんどん着せてあげたらいいよ」
そう教えてくれたのは、知人の先輩ママだ。その言葉の通り、彼女からお下がりでいただいたかわいいファミリアのチェックのワンピースは、ちょっとおめかししたい日はいつも着るようにした。膝を大きく覆って足首あたりまであるロングスカートだった丈は、いまでは膝にかかるかかからないか程度で、もうすでに短い。背が、伸びたようだ。彼女のあの言葉のおかげで、私はこのワンピースを着た我が子とたくさん出会えた。こういう何気にない一言こそ、実感がこもっていて道標になる。
かわいいけど、あまり着ない服。着せるのが面倒だったり、生地が硬めだと首が荒れやすかった我が子には痛そうで着るのを避けた。襟元が白い服も、食事の度に気を遣う。ちょっとぐらいバナナが付いてもへっちゃらぐらいな色や模様の服が重宝した。襟ぐりが開きすぎる服もなんだかだらしなくなるので、ほどよい開き方でかぶって簡単に着せられる方が良い。ノースリーブもかわいいが寒い部屋では気を遣うので、袖付きの方が良い。自分の中での着させたい順位が徐々にできてきた。朝、パジャマ を脱いで今日は何を着ようか?と考える時間は、毎日ワクワク楽しかった。
ロンパースばかりきていた昨年。セパレートの長袖って、どんな風に着こなすのだろう。夏が来る前の未知のドキドキを秋に向けて再び感じている。季節が変わり、また新たなステージに進む。もう少しだけ、まだ半袖でいいよねと朝の天気を見上げながら、大好きな夏服の袖を通す日々を続けよう。