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やわらかさを取り戻す

最近、「やわらかくなった」と何人かに続けて言われた。
自分ではあまり自覚がなかったが、振り返ってみると「できない自分に対して諦めがついてきた」のかもしれない。

妊娠がわかり、身体が思うように動かず、今後仕事を自分中心で続けるのが難しくなることに焦りを感じた。自分でお金を稼いでやりくりすることで得られていた達成感や自己効力感、自分だけのことを考えて好きなように時間を使う自由気ままさ…そういった今まで自分が価値を感じていたものを、手放さなければいけない。そのことに苛立ちを感じていた。

でも、安定期に入り、人と暮らす生活にも大分慣れてきた。ふたりの生活は、少しの制約はあるけれどわりと楽しい。全て自分でやり遂げるのは難しいが、その分助けてもらえる気楽さも覚えた。お互いの得意なことの棲み分けもできてきた。相手の傾向を知り、衝突しない伝え方も心得てきてからは、ストレスもなくなった。

人から助けてもらうことは弱さの象徴だと思っていたが、助けてもらえると素直にありがたいと思えるようになった。こうなってくると、逆に今まで、誰の助けも借りずに頑に自分でやりくりしようと思ってきた私は相当肩肘張って生きてきたなあと思う。

強さと弱さの二択ではなく、しなやかさという新たな軸ができたのかもしれない。
どうなるかわからないけど、なんとかなるか。そういう気ままさに身を委ねるのは、穏やかで悪くない。

助産師として。物を書く人として。一人の女性として。
アイデンティティがなくなり、丸裸にされるような心もとなさに死にそうに不安になることも時々ある。でも、そういう自分にくっついていたいろんな肩書きやプライドなどの鎧を一旦下ろして、生まれたときのやわらかさを取り戻す唯一のチャンスが妊娠・出産であるとファン助産院の杉山先生は言っていた。私は、その言葉に感動して助産師になろうと思った。

一旦下ろしても、消えるわけではないし、やりたくなったらきっとまたうおーと奮起するのが私だ。やらなくちゃではなくて、「やりたい」の思いに正直に、ちょっくら人に頼って生きてみようかと思う。
(22w6d)