禅の道(52)燈明
仏教における燈明の意義
仏教において「燈明(とうみょう)」は非常に重要な象徴です。「光」は智慧や悟り、また心の清らかさを象徴するものであり、暗闇を照らす光のように、無明(無知や迷い)を取り除く力として古くから大切にされてきました。燈明は仏前に供えられる供物のひとつで、諸仏や菩薩に敬意を示し、悟りへの道を照らす願いが込められています。
自燈明・法燈明の教え
釈尊は涅槃に入る前、弟子たちに「自燈明・法燈明」という教えを残しました。これは「自らを燈明とし、法を燈明とせよ」という言葉で、悟りへの道を示す大切な指針です。
自燈明
他人や外部に頼らず、自分自身の内なる光を頼りに生きること。自らの内側にある智慧を信じ、自らの行いを律することで、真の自由と悟りに至ることが強調されています。法燈明
仏陀の教え(法)を灯火として、正しい道を進むこと。仏教の教えが人生の羅針盤となり、迷いを超えて生きる助けとなるという意味です。
燭(しょく)の歴史
燭(ろうそく)は、古代より光源として使われてきました。仏教が伝来した当初は、松脂を用いた松明や油皿が主に使われていましたが、中国や日本では、時代が進むにつれて蜜蝋や植物性の蝋を用いたろうそくが作られるようになりました。
日本では、平安時代に宮廷や寺院で蝋燭が使用され、仏前に灯す燈明として重要な役割を果たしました。江戸時代になると、和蝋燭が一般にも普及し、仏壇に灯されることが一般的となりました。
和蝋燭は植物由来の材料(櫨(はぜ)や米ぬかなど)から作られ、炎が大きく揺らぎ、独特の温かい光を放ちます。この揺らぎは「無常」を象徴し、静かに燃え尽きる姿が人々の心に深い感慨を与えます。
自宅でろうそくを灯す深い価値
現代の家庭でも、蝋燭(ろうそく)を灯すことには大きな意味があります。
心を静める時間を作る
ろうそくの炎は不思議と人の心を落ち着かせます。瞑想や坐禅の際にろうそくを灯すと、炎に意識を集中することで、心が静かに整い、雑念が取り払われます。無常を感じる
炎は常に揺らぎ、形を変え、そして最後には燃え尽きます。この一連の姿は、仏教の根本の教えである「無常」を目の当たりにさせ、日々を大切に生きることの価値を思い出させてくれます。空間の浄化
炎の光には浄化の象徴的な意味があり、ろうそくを灯すことで空間が清らかになったように感じられます。特に和蝋燭は煙が少なく、自然な香りも心地よい環境を作ります。祈りと感謝の場を演出する
仏壇に灯すことで、仏や祖先への感謝の気持ちを表し、家族の絆を深める象徴的な行為となります。
和蝋燭を日常に取り入れる
もし自宅でろうそくを灯す場合には、和蝋燭を選ぶのがおすすめです。炎が揺らめく様子を眺めながら静かに過ごすひとときは、現代の忙しい生活において大きな癒しとなります。加えて、以下のような習慣を取り入れるとよいでしょう。
毎日の瞑想の時間に灯す
朝や夜、ろうそくを灯して心を落ち着け、感謝や祈りを捧げる時間を持つ。子供や家族と無常を学ぶ場として
ろうそくの炎を眺めながら、仏教の教えについて静かに語り合う。静かな趣味として
自分で和蝋燭を作るワークショップに参加することで、手作りのろうそくの魅力を味わうこともできます。
結び
燈明は、仏教における智慧の象徴であり、現代においてもその価値は変わりません。自宅でろうそくを灯す習慣は、私たちの生活に安らぎと深い意味をもたらします。炎の揺らぎの中に無常を見出し、自らの心を照らす燈明として活用してみてはいかがでしょうか。
蝋燭は、昔からの照明器具であります。現代ではLEDのお灯明まであります。これが悪いわけではありません。仏壇や神棚に燈明をかかげることは、仏さまや神様に、今の自分を見ていただく意味もあります。また、ろうそくの火が火災の原因となった悲しい過去は枚挙にいとまがありません。
寺院の歴史は、火災の歴史ともいわれます。火の消し忘れや消し方が不十分で自然に発火し、燭台を風や振動・動物など何らかの理由で倒れて、火災が起きています。くれぐれも注意したいものです。寺院では火を鎮める「鎮防火燭」などの御札を配ったり貼ってあることが多いですね。
曹洞宗の寺院では山門鎮護の「招宝七郎大権修理菩薩」をお祀りしています。その由来はともかく、火災から守ってくださる佛菩薩や諸天善神がおられることは確かです。なぜなら自身の裡にある「火災予防」の精神がそのまま佛菩薩のお働きであるからでございます。
年末の慌ただしさのなかで、火災予防の念は大事なことです。この寒い時期に決して火災にあわないよう祈るばかりです。
鎮防火燭
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念水庵
にゃんすいあん日記22日目
こどもたちは、元気です。
元気すぎて、ただでさえ狭いハウスのなかを所せましと駆け回っています。
あそびつかれて眠っているすがたは本当にかわいいものです。
かれ彼女のために、ただいま風除室をつくっています。