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禅の道(89)日用大工のすすめ

日用大工——毎日の営みを深める「禅の姿勢」

「日曜大工」という言葉は、多くの方にとって“休日に行うDIY”を思い浮かべるかもしれません。ところが、ここでお話ししたい「日用大工」は、単なる手先の作業やDIYにとどまらない、私なりの造語です。むしろ「日々用いる大いなる工(たくみ)」という意味で、日常のあらゆる仕事・作業を、深い集中力と修練によって成し遂げていく姿勢を指しています。


小手先の技術ではなく「日々の修練」が大切

仕事や作業をするうえで、表面的な技術や技能だけを追い求めていると、どうしても「手際のよさ」や「効率」ばかりに目を奪われがちです。もちろん、業務効率化は大切な要素ですが、「日用大工」で大事にしたいのは、日々の積み重ねで培われる精神的な成長です。
それは、努力と集中によって磨かれていき、結果から素直に学び取ろうとする姿勢によってさらに深まります。たとえば、同じ作業を繰り返していても、そこから何かを学び取ろうとする意欲があれば、自分の内面は確実に変わっていくわけです。


なぜ仕事をするのか——「生きがい」は観念にすぎない

「仕事はお金を稼ぐため」「生活の糧を得るため」というのは確かに一面の真実です。しかし、「日用大工」の視点からいえば、必ずしもそれが最終目的ではありません。
多くの人は「生きがい」と表現しますが、よく考えてみると「生きがい」もまたひとつの観念です。その観念にとらわれることで、大切なものを見失ってしまうこともあります。
では、私たちは一体何のために日々、仕事や作業に取り組むのでしょうか。その答えは、実はとてもシンプルです。「目の前にある為すべきことを、ただ黙々と、一つ一つ丁寧に行う」。そこにこそ、「大いなる工」が宿るといえるでしょう。


淡々と「一日一日全力」を尽くす

大相撲の力士がインタビューでよく口にする言葉に「一日一日全力を尽くす」というものがあります。華やかに見える世界でも、要は地道な鍛錬の積み重ねしか道はない、ということの表れです。
これはビジネスでも、家事や育児、あらゆる場面に通じる考え方です。目の前にある小さなことを、ただ淡々と、時には自分なりの喜びを見いだしながら行う。その積み重ねが、いつの間にか自分自身を大きく成長させているのです。


まとめ:「日用大工」とは日々の心を磨くこと

「日用大工」は、DIYのように手を動かすことだけを指すのではありません。むしろ、あらゆる仕事や作業を通じて、自分の心を磨く行為ともいえます。

  • 短期的な成果や数字にとらわれすぎない。

  • 毎日の努力・集中を通じて、自分を高めていく。

  • 結果から学ぶ姿勢を常に持つ。

  • 大切なのは、ただ淡々と、一日一日を全力で生きること。

自分の中で「これだ」と決めたことを、いちいち理由や意義を考える前に、とにかく丁寧にやってみる。そんな真摯な姿勢こそが、「日々用いる大いなる工」を養い、私たちをより豊かな境地へ導いてくれるのではないでしょうか。

大工さん、幼い頃のあこがれ。


ご覧いただき有難うございます。
念水庵 正道


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