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アスパラガスと卵は相思相愛!?

いきなり尾籠(びろう)な話ですみませんが、先日茹でたアスパラガスを食べた翌日のことです。尿が白ワインのソーヴィニヨンブランのような香りだったのです。そのことをオクサマに話すと、「それはアスパラガスの匂いよ」と。今までずいぶんアスパラガスを食べてきたのですが、こんなことはありませんでした。そこで調べてみると、アスパラガスを食べた後の尿が臭うのではなく、尿の匂いを感知出来る人と出来ない人がいるとの説が見つかったのです。これは、どういうことでしょうか。専門家の友人に訊ねてみると、「遺伝子検査によると、日本人のうち、感じ取る可能性が高い人が少数で、可能性がやや高い人が3割くらい、可能性がやや低い人がほとんど」とのこと。しかし、急に匂いを感知できるようになったというのは、体質でも変わったのでしょうか。

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アスパラガスには緑と白の2種類があり、地面の外で栽培すると緑になり、土を被せると白色になるにはご存知だと思います。これらは人間が栽培しているものですが、野生のアスパラガスもあるのです。フランス料理の付け合わせなどで、土筆(つくし)のような感じで穂先を食べます。日本でいうと、山菜感覚でしょうか。野生のアスパラガスは、栽培のアスパラガスに比べると香りが強く、“Les asperges sauvages(野生のアスパラガス)”や“L’asperge des bois(森のアスパラガス)”と呼ばれています。一年のうちでも限れた時期しか味わえないものなので、毎年このシーズンを楽しみにしているのです。ホワイトアスパラガスは、ヨーロッパでは春を告げる野菜の代名詞として広く知られていますが、ルイ14世が卵黄とバターで作る「オランデーズソース」で合えたものを大変好んで食べていたことから、伝統的にホワイトアスパラガスを使った料理はフランスに多いのです。

日本のフレンチのグランメゾン「銀座レカン」の高良康之総料理長とレシピ本を制作したことがあるのですが、その中でアスパラガスについて面白いレシピを教わったのです。ルイ14世はオランデーズソースで食べていますが、ソースが発明される前にはどうしていたのかという内容でした。まずは、現在のオランデーズソースですが、卵黄と水を混ぜ、さらに湯煎して混ぜてから澄ましバターを混ぜ、塩やレモン汁を入れて作ります。これに対して、古典的なオランデーズソースである「アンシエーヌ」は、クルトンにビネガーをしみこませ、別添えにした卵黄を、卓上でからめてソースにします。撮影しながら味見したのですが、酸味の強い古典的なソースより、バターの入った現在のオランデーズソースの方が断然美味いのは当然ですが、高良シェフ曰く、こうしてソースが変化(進化)していく過程を知るとより食文化が理解できるのです、と。そして、ホアイトアスパラガスの茹で方。まずは皮を剥いて、その皮を束ねて、一緒に茹でるだけです。皮を一緒に茹でるのは、皮にはアスパラガスの香りが一杯で、実に香りを入れるためです。以前から皮を一緒に茹でてはいたのですが、皮を束ねてなかったので、鍋から引き上げる時に見た目が良くありませんでした。流石にプロは違いますね。

家でアスパラガスを食べる時は、オランデーズソースを作るのは面倒なので、半熟の目玉焼きをのせて、卵の黄身をソースにしながら食べます。この目玉焼きを乗せる食べ方を「ビスマルク風」と呼ばれています。ビスマルクは19世紀のドイツの鉄血宰相で、料理に目玉焼きをのせて食べるのを好んでいたことから、目玉焼きをのせた料理をビスマルク風と呼ぶようになったのです。よく行く馴染みのレストランでは、ちょくちょく「ビスマルク風にして」と、オーダーするのです。本当に茹でたアスパラガスとシンプルな卵の組み合わせは絶品ですが、最後にこれを味噌汁に入れるのをお薦めします。アスパラガスを茹でて、味噌を溶いて,仕上げに落とし卵を入れるのです。これは、本当に美味いのです。ホワイトアスパラガスの和名は「松葉独活」!何となく納得しませんか。

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(2017.5.26公開)

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