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食材に対する思い
お店を営んでいると、いろいろなお客様との出会いがあり、その度にいつも感じる事があります。どのようなお仕事をされているのであれ、その方のお人柄が反映されているのだなぁ、と。それは、食材ひとつとっても同じ事が言えます。食材を扱う前に、私は必ずその生産者にお会いするようにしています。情報化社会のこの世の中で、手に入らない情報や物はないのかもしれませんが、生産者との信頼関係は、容易には築く事は出来と考えています。食べるのも、作るのも、提供するのも、全て人なのです。心を動かす料理を作るためには、心ある生産者の食材が必要です。どれだけの物語がこの料理に詰まっているのか?そういった背景まで伝えてこそ、楽しく美味しい食事が出来ますし、それを伝えるのも、また料理人の仕事だからです。お客様が高額なお金を支払ってレストランに食べに行く目的は、単に家庭では味わえない高級な料理を食べるだけではないのです。コース料理を気の合う相手と一緒に分かち合い、楽しい時間とサービスを共有すること。その全てが必要不可欠な要素だからです。食材とは「食財」です。人と人との心を豊かにできる財産なのです。だからこそ、その人との心の繋がりを大切にしているのです。
(2014.6.6公開)