貧血に効くロック|場面ごとのプレイリスト
30代の半ばにもなると、聞いてきた音楽の幅も増え、生活の場面ごとに聞く音楽のジャンルを自由自在に変えるようになってきています。
平日の忙しい日の夜はストレスを発散するようにロックを聴くことが多く、週末の仕事を終えた夜には自分への褒美のように酒を飲みながらジャズを聴き、休日の朝は落ち着いた気持ちでコーヒーを飲みながらクラシックを聴いています。
平日に仕事を頑張らなければいけない時にショパンのノクターンを聴いても何だか身が入らないし、休日の穏やかな朝にヘヴィーメタルを聴いても気持ちが休まりません。
若いころは新しいジャンルの音楽の魅力を知っていくことに楽しみを見出していましたが、今はそこまで新しい音楽ジャンルを発掘しにいく機会も少なく、自分が知っている音楽を現在の生活にあわせて選曲し、日々を過ごしています。
これは何も「平日と週末」といったカテゴリ分けだけではなく、もっと細かいケースに分けて「○○な時のプレイリスト」を作っているのです。
イメージしやすい例としては「失恋した時に聞く曲」のようなもので、誰もがこういった思い入れのある曲は持っているのではないでしょうか。
僕のなかで特徴的な場面に聞くプレイリストに「貧血になった時のプレイリスト」があります。
僕は過去の病気治療において胃を摘出しているので、血液を生成する際に必要とされるビタミンB12を身体に吸収させる能力が欠如しています。ビタミン剤を飲んで補っているのです。
しかし薬を飲み忘れたりすると、どうしても貧血状態が著しく表れてしまいます。貧血になると頭はフラフラしてしまい、活力のない一日を過ごしてしまうことになります。
薬が効き始めれば回復することはわかっているのですが、即効性があるわけではないのでそれまでの期間は貧血状態で朦朧とした感覚の時間を過ごすのです。
そんな貧血でしんどい時を音楽を聴くことでやり過ごしています。独断で作った全7曲のプレイリストがあるので、それを聴いて朦朧とするのです。
そのうちの一曲目がルー・リードの『My house』という曲で、僕にとってはこれが「貧血の時に最も聴きたい一曲」です。
貧血の時の心境を歌った曲でもなんでもないのですが、聞き手は何も共感をもとめる必要もありません。純粋にこの曲を聴くと心が穏やかになり、程良い気持ちの盛りあがりをもたらしてくれるのです。
ルー・リードも自分が創作した曲が、遠く日本の地で貧血をやり過ごすために聞かれているとは思いもしていないはずですが、僕にとっては貧血の辛い状況をサポートしてくれる思い入れの強い一曲です。
貧血だけではなく、健康に関わる様々な症状は医学的な解決が何よりも大切ですが、人にはそれぞれの生活があるため、医療だけでは解決できない細やかな困難が数多く発生します。
そういった時は音楽でも美術でも読書でも、自分を助けてくれる芸術を味方にしてその日を乗り越えることをおすすめします。
辛い時を共に乗り越えた芸術は、その後には深く心に残るお気に入りのものになるはずです。
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