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第38回全国短歌フォーラムin塩尻で俺の短歌が入選した

第38回全国短歌フォーラムin塩尻で、俺の短歌が入選したので紹介したい。ペンネームは、石井啄也。

ひとりだけパンツスーツでうつむいて歩く人あり 振袖のなか

全国短歌フォーラムin塩尻のホームページより

この短歌を作ったときは、あまり短歌が思い浮かばないときだった。そんなとき、以前『ダ・ヴィンチ』という雑誌でエッセイストの岸田奈美が書いていた言葉を思いだした。

彼女が人生を振り返る連載を始めたときに、5回で書くことがなくなってしまった。その時、相談した編集の人からこうアドバイスされたという。

『岸田さんの中には自分でも意味がわからないけれど、忘れられない記憶や光景があると思う。それを書いてみませんか?』

『ダ・ヴィンチ2023年6月号』株式会社KADOKAWA

俺にとって忘れられない光景はなんだろう、と思ったときに思い出した光景がある。俺は、20歳のころは東京の八王子で住んでいて成人式も八王子の成人式に参加した。

成人式に向かう途中で、同じく成人式の会場に向かっている振袖姿の女性たちがいた。歓談している女性たちのなかで、1人だけ黒のパンツスーツを着ている女性がいた。彼女は黙って下を向いたまま歩いていた。パンツスーツだったのは、経済的な事情だろうか。

成人式のことはほとんど覚えていないのに、その光景だけははっきりと心に刻まれている。その光景を短歌にした。選者の小島ゆかりは、次のような評も書いてくれていた。

「パンツスーツでうつむいて歩く」人の姿が少し痛々しく眼に浮かぶ。個人の事情はわからなくても、一人孤独を抱えているような、その人を思いやる気持ちが伝わってくる。

全国短歌フォーラムin塩尻のホームページより

選者に心から感謝したい。

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