おすすめの歌集『イマジナシオン』toron*著(書肆侃侃房)
概要
著者の短歌は、俺が投稿している日本経済新聞の短歌投稿欄である日経歌壇に、一年半くらい前に掲載されていたことがあってそのときに初めて読んだ。
凄くいい短歌だったし、ペンネームもユニークで印象に残っていた。
短歌にしているテーマは身近なものが多いが、それをドラマチックに表現する能力が著者はめちゃくちゃ高いと感じる。この歌集は2022年に発行されている比較的新しい歌集だが、これからもっともっと注目されてもおかしくないと思っている。
それと、短歌の定型である57577に忠実な短歌が多いから短歌を始めたばかりの人が読むのにもいいと思う。
じゃあ、この歌集で俺が特に印象に残った短歌を紹介したい!
特に印象に残った10首
比喩がドラマチックで、しかも凄く的確だ。
確かに、万華鏡をのぞくと見たものが「破片」になったように見える。それを、「破片にしてみる」と表現したところに著者のユーモアを感じる。
「まぼろし」を「本物」にしたのが、暗闇を明るくする「マッチ」というのがいいなあ、と感じた。
「ひつじ」が「数え終わった」あとに「夜のはじまる国へ」移動していたという意外性。
「神さま」は、想像よりもずっと小さいのだ。
そういえば、公園の噴水とかホースで水を出している時にミニチュアの虹が見えるときがある。「一生分の」と表現することで、詩が生まれた。
夜空を眺めているのかと思ったら、結句の「黒ラベル」にはっとさせられる。身近なところにも、「星」はある。
確かに、「雨音」は地面や屋根などに当たる音だからそのとき「雨」はただの水になる。「まばたきを繰り返し」たのは、「雨」たちの最後を看取るためなのか。
「Googleマップを拡大」するたびに、この短歌を思い出すと思う。
この歌集で一番好きな短歌である。「この夏で最後だと」知っているからこそ、感じることができる「うつくしさ」なのだろう。
まとめ
歌集のタイトル『イマジナシオン』とは、フランス語で「想像」という意味らしい。俺自身、これからもこの歌集を時折手に取って著者の想像の世界を楽しみたいと思う。
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