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おすすめの歌集『雪麻呂』小島ゆかり著(短歌研究社)
概要
歌人小島ゆかりの第15歌集。著者は、産経歌壇や中日歌壇などの選者をつとめており、歌集『希望』で第5回若山牧水賞、歌集『憂春』で第40回迢空賞など受賞多数。本書でも、第3回大岡信賞を受賞している。現代短歌界を代表する歌人の1人である。
著者の短歌は、明るくユーモアのある短歌が多く、日常の何気ない風景から新鮮な感覚を与えてくれる。ほぼ文語だが、使われている言葉は難しくない言葉が多いので、文語に慣れていない人でも楽しめると思う。
穂村弘、木下龍也と同じくらい尊敬している歌人である。じゃあ、何首かこの歌集から短歌を紹介したい。
特に印象に残った7首
ものおもひ暗澹たれどイマジンとひまじん似てることもおもへり
「暗澹」とした日々だからこそ、「イマジンとひまじん」が似ていることを考えるような時間も、必要なのかもしれない。
ブランコは乗るより降りるむづかしくおッとッと さくらももこさん逝く
「ブランコ」は、人生のことだろうか。
古猫はこゑに怒りを若猫は背に怒りを見せて対峙す
著者は、あとがきによると二匹の猫を飼っているそうで猫の歌も多い。猫の声と姿が目に浮かんでくるようだ。
外側のいちまいは風のかたちなり手を差し込んでキャベツをはがす
でこぼこしたキャベツの形を「風のかたち」と詩的な感覚で表現していて、凄くいいなあと思った。
ああ五月、未来長者の若者にまじりてさわぐ過去長者われ
「未来長者」、「過去長者」という表現がユーモラス。
あたらしき冷蔵庫ふるき冷蔵庫すれちがひたり玄関前で
事実を述べているだけなのに、妙に味わいがある。
母がもう忘れたるわが誕生日 未生以前の秋のかぜふく
この歌集の最後の短歌。介護についての、短歌も多い。「未生以前の秋のかぜふく」から、著者の胸に湧く寂しさを感じることができる。
まとめ
あとがきで著者は、こう書いている。
タイトルの「雪麻呂」は、架空の名前です。雪の気配とともに胸に降りてきたこの言葉に、不思議ななつかしさを感じてタイトルにしました。
この歌集は、夜空から雪が舞い降りているような表紙でそれが凄くタイトルにあっていて、表紙も好きである。去年買った歌集で、何回も読み返している。
『雪麻呂』。心からおすすめしたい歌集だ。