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土木3D-CADの基礎知識とCIM(地形モデリング編)

土木地形の3次元CADで扱う要素(データ)の基本は、「3D線」と「3D三角形面」の2種類です。

つまり、これはAutoCADやCivil 3D等の3次元CADソフトで言うところの、「3Dポリライン」と「3Dサーフェイス」というものになります。

中山間地に造成の道路と路区と法面の例(データ提供:山梨県土地改良事業団体連合会殿)


土木の3Dモデリングは軽さ重視で・・・

地形の3Dモデリングでは、ソリッドは基本使いません。(と思います。)
ソリッドは中身の詰まった立体の要素になりますが、なぜかと言うと、建築系や機械系の3DCADとは違って土木系の場合にはそれが地形、つまりは、中身を詰めると地球自体になってしまうからです。。(笑)

私もその昔には下水道のマンホール(土管類)をソリッドで作った記憶はありますが、道路にしろ、法面にしろ、堤防にしろ、地形がらみの土木系構造物の基本は三角形面の3Dサーフェイスにてモデリングを行います。

三角形面で作った小段付き法面

中身が詰まっていない表面のみの3Dサーフェイスで作る構造物は圧倒的に、ソリッドより軽いからです。(実物の重量ではなく、CAD上でのデータの話ですが。。)

特に土木系の場合、建築系や機械系に比べて扱う範囲(面積)が広大で大きくなるのが特徴ですから、要素(CADのデータ)が軽ければ軽いに越したことはありません。(これは当然ながら、重くなればなるほど固まる、落ちる、などが多くなりますから、その様なトラブル対策にもなります。)

膨大な(広域な)データを扱う現況地形サーフェイスの例
計画道路と小段法面(灰色が切土、黄土色が盛土、緑が現況地形)


面は三角形

それと、「3Dサーフェイス」というのは必ず三角形の面になります。
四角形だと対角線で半分に切る必要があります。これは、数学の空間図形での三角形の頂点(3点)は必ず同一の面上に存在しますが、頂点が4点ある四角形の場合だと、3次元空間上では同一の面に存在できない場合があるからです。

そこは、2次元CADと3次元CADとの一番大きな違いかも知れません。

特に土木系3DCADの場合には、道路面や法面といった構造物は四角形でもいいですけど、土木系で肝心な地形(現況や計画等)では、その殆ど全てが三角形面になると思います。自然地形の面形状は3Dの場合、四角形では表現ができません。

なお、3DCADに四角形面や五角形面、六角形面・・・という概念は基本ありませんので、内部で勝手に三角形に分割してくれるのでユーザーやオペレーターがそれに気付かないで使ってるソフトというのはあるかとは思いますが、その場合でも、エッジ(面境界の外枠の線)を表示して見ればすぐにわかります。

地形モデルの「固定」と「TIN」について

それで、現況等の地形形状に関しては、よくあるのが点群からその「3Dサーフェイス」を起こすとか、等高線から起こすとか、があると思いますけど、それを「地形メッシュ」なんてよく呼びます。

大きく分けると、この「地形メッシュ」というのは「固定メッシュ」と「TINメッシュ」の2種類がありますが、昨今ではより実際の地形に近く、より精度が高いモデリングが見込まれる「TINメッシュ」の方を用いる場合が一般的に多いです。

固定メッシュの例
TINメッシュの例

TINメッシュ」とは、日本語に直すと「不整三角網」の意味ですが、つまり、「大きさや形状の異なる三角形面の集まりだ。」というものです。

等高線から地形メッシュを起こす場合だと、必ずこの「TINメッシュ」のモデルになります。
なぜかと言うと、等高線の頂点というのはまちまちで不規則な配置だからです。それ(各等高線上にまちまちに配置された点)を繋いで三角形面を(専用のソフトにて)作って行くことになります。

点群からの場合には、処理方式やデータ(の並び方)によっては、「固定メッシュ」と「TINメッシュ」そのどちらのモデルでも作成は可能かと思います。

国土地理院の標高データ

「固定メッシュ」のモデルの方は、その代表格が国土地理院のメッシュ標高データというもので、昔はCDで(確か1枚が7千5百円くらいで)売られていた「50mメッシュ標高」が主で私もよく使ってはいましたが、今では一辺が5m四方でより詳細な「5mメッシュ標高」のデータが、無償ダウンロードで国土地理院の基盤地図情報ホームページから配布されいています。

CIMの場合でも、大雑把な部分に関してはわざわざ測量をしなくても、このダウンロードデータを用いた地形で設計可能だと国土交通省からの指針(活用ガイドライン)が出ているかと思います。

土木3DCADの歴史とCIMの意義(お絵描きツールからの脱皮)

思えば、30年前に私がある大手ゼネコンのCADチームという部署で土木3次元CADの開発に関わり始めた頃には、土木の3DCADというのは「ただのお絵描きツールだ!」と揶揄もされる存在でしかなかったです。。

その当時の土木系の3Dデータなんてものは、今のCIM的な発想なんてものはまるでなかった時代です。

建築系や機械系のそれとは違って、物づくりに(施工に)直接関係するものではまったくなかった・・ですから、用途として住民への計画説明プレゼンなどが目的での、ただ完成後の景観絵を作る道具でしかなかったわけです。

AUtoCAD2000当時の画像

私が当時に開発していた土木系3DCADのシステムにおいても、その名称は「土木景観シミュレーションシステム」というものでしたから、それが二十数年の時を経まして、「CIM」というものが土木工事の生産性を向上させる有効な手段であるとの国土交通省からの提唱がなされまして以降、

今日では、土木の立体的な可視化が、ただ住民への説明の道具から「つくる側の大きなメリットへ」と変わったきたわけです。(もちろん、可視化できる3Dのデータが大幅に増える分、従来からの地域住民へのプレゼンにもより大いに活用することができる思います。)

大手ゼネコンと比べて、中小では未だ未だCIMの導入は進んでおらず、従来の2D図面とは違う3D化への難しさ、ハードルの高さ、というのはあるかとは思いますが、やっと巡ってきた国を挙げての取り組みでありますから、

土木系3DCADのエキスパートSEを自負する私と致しましても(10年近く離れてはいましたけれど・・・)、CIMの推進の為にこれが人生最後の社会奉仕だと思って、CIM導入を考える中小の皆さまへ全力サポートをしていきたいと考えています。


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