十勝の夏、移住1年目8月の暮らし
8月になった。夏の十勝の暮らしについて、書いておきたい。
夏休みに入り、北海道は観光ピークに突入した。
友人が、いま美瑛、といってきれいな花畑の写真を送ってくれた。
夏の観光といえば、富良野、美瑛のカラフルなお花畑が有名だと思う。
十勝の夏は、緑だ。
週末に車を走らせると、のびのびとそびえるとうもろこしが目に飛び込んでくる。
少し前までは、黄金色に色づいた小麦畑とじゃがいもの花畑が綺麗だったが、この1週間ほどで様変わりした。
短期移住中のわたしが見た、初めての十勝の夏を記録。
黄緑色と黄金の畑
道をゆくと黄緑色に広がる、少し様子の違う畑はじゃがいもだ。じゃがいもがいつのまにか花の時期を過ぎて、しわしわと葉を黄色くして萎びている。
え、これ大丈夫かと心配になるが、じゃがいもは萎れてから収穫をするらしいというのを初めて知った。
緑と黄緑を塗り分けるとき、黄緑色は若葉の色だと勝手に思っていなかったか。時期を過ぎ枯れゆく葉もまた、黄緑色だと知る。
まだ青々としている枝豆などの畑にならぶ、萎びた黄色い畑がコントラストのある風景を作り出してくれる。
小麦はいつのまにかどこも刈り取られて、刈跡が広がっている。それはまだ黄金色に輝きを放ち、眩しい。刈り取られた後ですら豊かなエネルギーを感じさせる畑。
北海道は国産小麦の7割近くを生産しているらしく、十勝は屈指の小麦生産地だそうだ。
刈り取った麦わらを束ねた、麦稈ロールを運ぶトラックもこの時期の風物詩。
転げ落ちないか心配になるくらい山積みにした麦稈ロールを載せてさっそうと走る。
トラックとすれ違うと、その軌跡にかすかに麦の穂が舞う。
この麦稈ロールは牧場へ供給され、代わりに牧場の牛糞が堆肥として畑へとやってくる。物々交換のような循環がここでもうまく回っていることに関心してしまう。
とうもろこし、じゃないほう
とうもろこしの勢いがすごい。いよいよふさふさした穂をつけて実り始めたとうもろこし。天を向いてそびえ立つとうもろこし畑があちこちに広がっている。
中でも、背の高いとうもろこしが密集して生えている畑があり、見ると圧巻だ。
詰まった株間に目をやると、そこには薄暗闇が広がっていて、迷い込んだら出られないもしれないくらい、なにか恐ろしくも見える。
あまりに背が高いし、とうもろこしってこんなにつめて植えてよかったっけ。うちの庭に育っている小さなとうもろこしも、こんなに伸びるのかしら。
と、心配になってきて調べたら、背の高いのはどうやら「デントコーン」らしい。
とうもろこしの栽培には二つあり、人が食べるとうもろこしと、家畜用のとうもろこし「デントコーン」だそう。デントコーンは機械で一気に刈り取るため、密集して植えてOKなのだとか。
なるほど、この恐ろしげなとうもろこしはデントコーンだったかと、謎が解けた。
背が高くて、密集していて、葉が上を向いているのがデントコーン。一方、背が低くて、葉が横向きなのが人間用。
以来、とうもろこし畑を見るたびに、人間用かデントコーンかをついつい判定してしまう。
ところで、7月半ばから、道の駅に朝採れの「生でもおいしい」というとうもろこしが売っている。食べてみたら、めちゃくちゃおいしくて、甘いフルーツのよう。
家族一同で感動し、また買いたいねと言いつつ1本250円とそこそこのお値段がする。
生で食べられる特別な品種だからかと思っていたのだが、後日、別の直売所で買ったとうもろこしを試しに生で食べてみると、同じ味がした。
1本130円のごく普通のとうもろこしだ。
鮮度があればとうもろこしは基本的に生でおいしいようだ。
茹で、焼きに加えての「生」。
産地ならでは、とうもろこしの新たな食べ方を発見した夏。
毎日のトマト狩り
開墾したわが家の庭にもついに収穫シーズンがやってきた。
ミニトマトが毎日色づいてくれて楽しい。
きゅうりも気づけば実ができている。
夏休み、学童保育を利用している子どもたちは毎日お弁当を持っていくのだが、お弁当に入れるトマトをとってきて、というと、朝から畑にとりに行く。自分で収穫したトマトを、弁当に入れるという日々がやってきた。
あ、食育体験してるな、と感じ取れる瞬間だ。
収穫シーズン、ご近所さんからのおすそ分けもいただいたりする。
お向かいの方がやってきて採れたてのピーマンを袋いっぱい下さったが、ときは朝の6時半。すでに畑で一仕事終えられたみたい。
噂では日の昇る朝3時、4時頃から畑仕事の方々は始動しているらしい。
わが家に面した道道にも早朝からビュンビュンとどこかへ急ぐトラックやトラクターが通る。
とにかく十勝の朝は早い。
朝食を終えて8時頃、自転車で村道をゆくと、牧草ロールを巻くトラクターに乗った牧場主の大家さんとすれ違った。牧草の刈り取りは2回目のシーズンが始まっていて、こちらもすでに朝の一仕事を終えられたご様子。さわやかに手を振ってくれた。
日が昇るとともに働く人々の素敵さよ。
すがすがしく忙しい、十勝の夏が過ぎてゆく。